91歳店主「これも時代の流れ」 明治初期創業の衣料品店「ヤマシメ門林」年末で閉店 青森・野辺地町
明治初期創業で150年以上の歴史を持つ青森県野辺地町野辺地(新町地区)の老舗衣料品店「ヤマシメ門林(もんりん)」が今年いっぱいで閉店する。店主の吉田テルさん(91)が歩くのが困難になったことや、相次ぐ問屋の廃業、地域の人口減少、顧客の高齢化が重なり、閉店を決めた。吉田さんは「続けてほしいと言ってくれるお客さんもいて、ありがたいが、これも時代の流れ」としみじみと語った。 1983年3月号の広報のへじによると、1869(明治2)、70年ごろ、初代の吉田林治さんが八幡町地区に呉服屋を創業。林治さんが以前、下町地区の寺門前に住んでいたため、門前と林治を縮めて門林とした。町歴史を探る会が復元した82(明治15)年の八幡町地区の市街図にも、林治さんの名前がある。 1884~1967年にはたばこ、1904~67年には切手も販売。横浜町と六ケ所村泊地区に支店を設け、夏は馬車、冬は馬そりで下北まで手広く商売をしたという。 町発行の「野辺地町の祭礼と民俗」には、終戦直後に売り物の衣料品がなく、瀬戸物や雑貨を店に並べたこともあった-との記載もある。 当主は代々、林治を襲名し、4代目は町議会議長も務めた。吉田さんの夫・5代目林治さんが67年、商店街の新町地区に店を移転。95年に夫が亡くなってからは吉田さんが店を引き継ぎ、20年以上勤める従業員とともに守ってきた。 吉田さんは「(57年に)嫁いできた時は、店が忙しかった上、不幸が重なったり、生まれてきた子どもと(当時、中高生の)夫の弟や妹を一緒に育てたりして、外に出歩く時間もなかった。店を移した翌年には十勝沖地震が発生し、新しい店が大きな被害を受けた。苦労した思い出ばかり」と振り返る。 商品は呉服から洋服が主流となり、近年はベビー服、子ども服の取り扱いをやめ、大人の服を中心に販売してきた。吉田さんは「今年夏に足が悪くなって、シャッターを開けるのも大変になった。仕入れにも行けなくなり、最終的に店を畳む決断をした」と語った。 19日、店に買い物に来た60年来の女性客(79)は「町内で衣類を売っている店は少ないので、頻繁に来ていた。寂しくなるね」と残念そうに話した。