バッテリーEVトラックはコスパ悪すぎ! CO2削減コストは「RD」の5.8倍でディーゼル車のほうがマシ!?
BEVとICE-RDの経済性の比較
生産活動に使う「生産財」であるトラックにとってコストは何よりも重要で、基本的に「消費財」である乗用車とは根本的に異なる。中でもトラックを運行する上で最も重要なのが、車両コストと燃料コストとされる。 RDを活用することの最大の利点は、既存のディーゼル車でそのまま利用できるドロップインという特性にある。車両やインフラに関して追加のコスト負担が発生しないため、CO2削減に向けたコスト効率が非常に高いのだ。 小規模な事業者にとってこれは特に重要で、米国でも日本でも運送業界の大部分を占める中小事業者は、BEV化によるコスト増を受け入れるほど体力がない。できる限り負担の少ない方法を模索しないと、脱炭素に向けた運送業界の取組はいずれ頭打ちになるだろう。 米国エネルギー庁(DOE)の調査によると、米国の2022年の大型トラックの新車価格は、ICEトラックが16万ドル(2024年6月時点の為替レートで2490万円)、BEVトラックはおよそ3倍の45万7000ドル(同7110万円)だった。 同年の米国内のディーゼル大型トラックの販売台数は245,164台で、トラック業界の新車購入費は約407億ドルだ。全車をBEVとした場合、追加で755億ドルの費用負担が生じる計算だ。メンテナンスコストはICEより低くなるが、車両コストを賄いきれず、総保有コストは13~26%高くなるという。 もう一つ重要なのが燃料コストだが、将来のエネルギー価格を予測することは極めて困難で、電気とRDのどちらが有利か断言することはできない。 参考までに米国の軽油価格は、45%が原油価格、25%が精製コスト、残りが税と輸送費とされる(米国は産油国であり、日本とは異なる点はもちろん留意する必要がある)。 電力価格は地域の公益事業委員会がそれぞれのルールに基づいて決定しており、地域によって大きな価格差があるが、近年はインフレやデータセンターでの電力需要などで電気料金が高騰している。 いっぽう、RDの価格は原材料となるコモディティ価格に依存する。ただ、カリフォルニア州のように軽油価格をベンチマークに小売価格を調整しているケースもあり、また、食品と競合するバイオ燃料(第1世代RD)を「再生可能」と認めない地域もあるので、政策の影響が大きい。 廃棄物等から作る第2世代RDは、原材料の供給量が大きく変動しないという特徴がある。価格が安定するいっぽう、需要が増えても供給を増やせないため、原材料となるバイオマスの多様性が重要となる。もちろん、藻類やシアノバクテリアから作る次世代バイオ燃料(第3世代RD)の研究・開発も進める必要がある。