【大学トレンド】「アバター」連帯感、大学で広がる 東大大学院「メタバース工学部」は女子中高生も関心?
メタバースとは、インターネット上の仮想空間のこと。大学の教育現場でもメタバースをさまざまな形で活用するようになってきました。理系分野の学びですが、中高生の女子生徒の関心が高いことが特徴です。時代の最先端を走る大学の姿を紹介します。 【写真】「内々定が9割」…理系はやはり就活に有利? 専門家「女子は特に確保したい人材」
全国でいち早くメタバースを教育現場に採り入れたのが、金沢工業大学(石川県野々市市)です。2021年度から試験的にメタバース上に学習センターを構築し、学生たちが自身の分身であるアバターを操ってグループディスカッションやプレゼンテーションができる環境を整え、22年度から実用化しています。 羽衣国際大学(大阪府堺市)では、英会話レッスンや国際交流の場としてメタバースを活用しています。21年12月には、3Dメタバース内でVRゴーグルを用いた英会話レッスンを行い、フィリピン人の英語講師と学生らが英語でクリスマスの過ごし方についてディスカッションしました。3Dメタバース内では実際に隣にいるような感覚を体感できるため、学生たちからも「アバターを使うことで緊張感が和らぎ、話しやすい」と好評だったといいます。 産学連携の取り組みにメタバースを活用する事例も増えています。順天堂大学(東京都文京区)は、22年4月に日本IBMと共同で順天堂医院を模した「順天堂バーチャルホスピタル」を設置し、医師や患者、家族らがアバターでアクセスしてコミュニケーションできるようになっています。入院や治療の内容をメタバース上で体験できたり、診療や事務手続きがオンラインで実行できたりと、患者の満足度を上げるとともに、医療従事者の働き方改革にもつながる取り組みを進めています。
東大大学院にメタバースの名を冠した“学部”
東京大学大学院工学系研究科(東京都文京区)では、22年9月に「メタバース工学部」を開設しました。これは正式な学部ではなく、メタバースをはじめとするデジタル技術を活用し、年齢やジェンダー、立場などの属性にかかわらず、だれもが最新の工学や情報を学べる場です。プログラムは、一部の演習や実習を除いてオンラインで受講できます。 メタバース工学部の柱は3つあります。1つ目は、中高生や保護者、教師を対象とするジュニア工学教育プログラム(ジュニア講座)、2つ目は社会人や大学生を対象とするリスキリング工学教育プログラム(リスキリング講座)、3つ目が若者に向けた工学に関する情報発信です。開設の背景には、先端テクノロジーが次々と生まれるなかで、データやテクノロジーを活用して未来の社会を担っていける人材が不足していることがあったといいます。 「メタバース工学部には、DX人材の間口を広げていくというミッションがあります。そのためには、学び直しによる人材育成と工学人材の拡大が必要でした」と、メタバース工学部の石原直事務局長は話します。