<頂戦・センバツ23報徳学園>足跡/中 「弱さ」自覚、広がる危機感 一球一球 集中して練習 /兵庫
雨天順延となった秋季県大会の3回戦で、報徳学園は夏の甲子園に出場経験のある市尼崎と対戦。これまでにない厳しい試合展開となった。 初回、敵失から1点を先制したが、三回には適時打で同点に追いつかれた。その裏、岩本聖冬生(いぶき)(2年)のランニング本塁打で勝ち越しに成功したものの、その後は打線がなかなかつながらない。五回を終えてグラウンドの整備中、大角健二監督は「このままじゃどこかで負けるぞ」と選手に危機感を持たせた。 試合は4―2で辛くも勝利したが、選手たちの表情は険しかった。学校のグラウンドに戻り、大角監督は「やるべきことはわかっているな」と静かに語りかけた。「弱さを自覚し、自分たちで考えてやらなければ、この先で勝てるチームにはなれない」という思いだった。 続く準々決勝は県内屈指の好投手、坂井陽翔(同)を擁する滝川第二との対戦だった。「このままじゃまずい」。選手たちはこれまでにない緊張感を持って、打撃練習を始めた。坂井の速球をイメージし、一球一球集中してバットを振り続けた。翌朝の試合直前も練習に取り組み、「つかんできた」「いまのいい感じ!」。グラウンドには明るい声が響いていた。 試合は両校のエース、滝川第二の坂井と報徳学園の盛田智矢(同)が先発。互いに無得点のまま、均衡が崩れたのは八回だった。報徳学園の先頭、山増達也(同)が二塁打を放つと、四球などで満塁とし、押し出しで先制。さらに辻田剛暉(同)の適時打やスクイズなどで計4点を奪った。盛田は被安打4に抑え、4―0で完封勝利した。 「少ないチャンスで好投手を打ち崩し、良い勝ち方ができた。自分たちで必死に練習に取り組んだ成果が出た」。大角監督は選手たちの成長に手応えを感じた。近畿大会の出場を決め、勢いに乗るチームは決勝の神戸国際大付戦も4―2で勝利し、3年ぶりの大会優勝を果たした。【大野航太郎】 〔神戸版〕