みずほ、楽天に助け船 ドコモは三菱UFJとタッグの可能性も
みずほフィナンシャルグループと楽天グループは資本業務提携を発表。みずほFGとしても、楽天グループに助け船を出したという程度の提携だろう。一方、NTTドコモはKDDIとの資金的な関係性が薄れた三菱UFJ銀行とタッグを組む可能性も出始めている。 【もっと写真を見る】
みずほフィナンシャルグループ(みずほFG)と楽天グループは11月13日、資本業務提携を発表。みずほFGが楽天カードの株式を14.99%、取得すると明らかにした。金額は650億円程度になる見込みだ。 翌14日には、両社の協業第一弾として「みずほ楽天カード」が発行されるという発表があった。 楽天グループが虎の子である、楽天カード株式を手放さざるを得なかったのは、楽天モバイル事業で積み重なった社債を償還するためだろう。 2024年、2025年の社債償還にはすでに目処が立っており、また楽天モバイル自体も黒字化が進んでいるものの、今後、5年間で1兆円規模の社債償還が迫っていることは間違いない。 楽天グループでは楽天モバイルの単月黒字化を急ぐ一方、例えば出資していた衛星通信会社であるASTに対して1000億円の価値をつけたり、すでに稼動している通信設備を一度、売却しつつ、リースさせてもらう方式で1700億円を調達するなどの金策に走っている。 楽天グループとしてはフィンテック事業として、楽天銀行や楽天証券、楽天カードが堅調に成長しているなか、金融関連企業を再編することも計画していた。しかし、その計画は断念し、楽天カード株の一部をみずほFGに売却することで、なんとか延命を図る考えのようだ。 みずほFGが楽天グループに助け船を出した 実際、みずほFGとしても、楽天グループに助け船を出したという程度の提携なのだろう。 楽天グループに対する出資比率は14.99%ということで、楽天カードの業績がみずほFGの決算に影響を与える持分法の適用外の数字を選んだようだ。 みずほFGの木原正裕社長は「数字にあまり深い意味はない。楽天カード自体はとても重要なビジネスと考えており、資本提携だけでなく、楽天グループとは双方にメリットがある提携をしていきたい。ただ、私は慎重派なので、まずはお試しということで会社の持分法の適用外になる数字を選んだ」と語っている。 実はみずほFGにはすでに「ユーシーカード(UC)」と「オリコカード」が存在しており、コレに新たに楽天カードが加わる構図になる。 木原社長は「一人でやるより、オープンでやった方が経済圏は広がる」と語る。 NTTドコモが三菱UFJ銀行とタッグを組む可能性も 木原社長はみずほ銀行におけるリアル店舗網、さらには店舗での顧客対応に強みがある点をアピールしている。 楽天の三木谷浩史会長も「オンラインで相当なプレゼンスがある一方、オフラインではまだまだだ」と、みずほFGと組むことで、オフラインでの顧客接点強化に期待を込める。 2021年に日本郵政が楽天グループに出資をした際、郵便局内で楽天モバイルの契約を獲るという取り組みが話題になった。今回もみずほ銀行の店頭で楽天モバイルの契約獲得を目論むかと思いきや、木原社長は「銀行はモノを売る商売ではない。銀行業法上、それはできない。三木谷さんは喜ばれるかも知れないが、業法を改正しないと無理だ」と一蹴した。 業界を俯瞰すると、KDDI傘下のauフィナンシャルホールディンス(HD)が49%出資していたauカブコム証券は、auフィナンシャルHDとの出資関係が無くなる一方、三菱UFJ銀行の100%出資となり、「三菱UFJ eスマート証券」に生まれ変わる。 その一方で、三菱UFJ銀行が22%、出資していたauじぶん銀行は三菱UFJ銀行との出資関係がなくなり、auフィナンシャルHDの100%出資となる。 これまでクレジットカード以外の金融事業に大きく出遅れていたNTTドコモはマネックス証券を取り込んだものの、本丸というべき銀行を手に入れられていない。 NTTドコモとしては、どこかのネット専業銀行を買収するのか、それともKDDIとの資金的な関係性が薄れた三菱UFJ銀行とタッグを組む可能性も出始めている。 いずれにしても、通信単体で儲けるのが難しい時代になっているなか、どの金融と組んで、自社のサービスを伸ばしていくのが得策なのか。通信会社にとって腹の探り合いが続くことになりそうだ。 筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ) スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。 文● 石川温