フジロック6回演奏の圧倒的存在感、USが思い出させてくれた「ロックンロールの粋」
YouTube世代の感性もチラつかせながら完全燃焼
セットリストは1stアルバム『Underground Renaissance』の全曲と、未発表曲、多数のカバー曲を取り混ぜた構成。ウィルコ・ジョンソンも『Pull The Cover』(1984年)で取り上げたボブ・ディランのレア曲「I Wanna Be Your Lover」は、過去のどのバージョンよりも高速化してパブ・ロック味溢れるアレンジで駆け抜ける。スライ・ストーン作の2曲「I Ain’t Got Nobody」「Help Me With My Broken Heart」も、言われなければそうとわからないぐらい、ソウル味が抑えられてUS流のロックンロールへと変換されていた。本編ラストに披露した「Say Mama」はジーン・ヴィンセントのカバーというより、同郷のロックンロール・バンド、Hurriganesのバージョンを参考に、よりガレージ・パンク寄りに料理したのではないか。 「Manchester Night Blues」では青木ケイタがバリトンサックスで参加。他の曲ではむしろ抑える方向だったR&Bフィーリングが濃厚に出てくるが、こういうトラディショナルなスタイルにもすんなり対応できてしまう演奏力を持ち合わせているバンド。テオはスタックス・サウンドの何たるかをよくわかっていて、まるっきりスティーヴ・クロッパーそっくりなリズムギターも弾いていたのだが、それだけにアンコールで披露されたサム&デイヴのカバー「Hold On, I’m Comin’」のド派手なぶっ壊しっぷりには惚れ惚れした。やっぱりリバティーンズ以降のフィルターが1枚入っていないと、ああいう大胆な解釈はなかなかできないだろう。YouTubeで古い音楽を発見した世代ならではの屈託のなさが気持ちいい。 二度目のアンコールではとうとう演奏する曲が尽き、二度目の「Black Sheep」を初っぱな以上のアグレッシブさで叩きつけて完全燃焼。鳴り止まない拍手に応えて「来年も必ず戻ってくる!」と日本語で宣言して去って行った彼らは、必ず格段のスケールアップを遂げて帰還するはず……とその場にいた誰もが確信したと思う。激烈にして爽快、ロックンロールの粋を思い出させてくれた、長く記憶に残りそうな一夜だった。 --- US 『Underground Renaissance』 配信・CD発売中 ※日本盤はボーナス・トラック1曲収録 解説・歌詞対訳付き
Masatoshi Arano