ザ・ラスト・ディナー・パーティーが語る、UK最重要バンドの優美な反乱
「存在すること」自体が政治的主張
彼女たちのデビューアルバム『Prelude to Ecstasy』には、「Sinner」や「Lady of Mercy」のような、宗教的な罪悪感と欲望についての曲が収録されている。その一方で、「Big Dog」は、いつかスヌープ・ドッグと共演したいと打ち明ける自信満々の大宣言だ。「Caesar on a TV Screen」は男性特有の妄想を巧みに想像しており、MVでは、バンドは胸当てと金箔の王冠を身に着けてシェイクスピアを演じている。 「Mirror」はモリスの目下のお気に入りの曲だ。“私はただの鏡/あなたの視線なしでは存在しない”と彼女は恋人にささやく。これがTLDPが他の多くのバンドと異なるところだ。彼女たちは怒りからセクシュアリティとアイデンティティの再生に至るまで、女性の体験を独断的に語るのではなく、ありのままに反映させているのだ。 ヴィヴィアン・ウエストウッド、クロエ・セヴィニー、教会のステンドグラスの窓に影響を受けているであろうバンドの美学も多くを語っている。メッシュとふわふわの靴下が、優美なレースのセットアップやレザーと組み合わせられている。ハイ・フェム(極めて女性的なスタイル)でありながら「don’t-fuck-with-me(なめんな)」でもあるルックは、彼女たちの作る音楽にマッチしている。コケットコア、バロックマキシマリズム、そして2007年頃のグラストンベリーという彼女たちならではの混ぜ合わせのインスピレーションを得られる場所は、ただひとつしかない。 どこからの影響なのか尋ねると、モリスは無表情で「Tumblr」と答えた。「フローレンス&ザ・マシーン、デヴィッド・ボウイ、クイーンみたいなたくさんのアーティスト」。 TLDPのメンバーたちは、個人としての、またバンドとしてのアイデンティティをまだ考えているところだ。彼女たちには政治や業界での経験について言いたいことがたくさんある。しかし、そうした意見を音楽の外で言うことに関してはより慎重だ。 「意図的ではないし、思うに私たちは意識が高いわけでもなくて……」 モリスは説明しはじめる。 「『存在すること』自体が政治的主張」とデイヴィーズが口を挟む。「誰もが政治的スタンスを明確にする声明を出さなければいけないってわけじゃない。でも、重要なことだと思ったら、私たちも話さないことはないと思う」。 --- ザ・ラスト・ディナー・パーティー 『Prelude to Ecstasy』 発売中 日本盤ボーナストラック収録 FUJI ROCK FESTIVAL’24 2024年7月26日(金)27日(土)28日(日)新潟県 湯沢町 苗場スキー場 ※ザ・ラスト・ディナー・パーティーは7月27日出演 FUJI ROCK SPECIAL ザ・ラスト・ディナー・パーティー単独公演 2024年7月25日(木)恵比寿リキッドルーム
Audra Heinrichs