トランプ氏が仕掛ける選挙戦術「分断の政治」の危うさ
KKKからの支持表明の拒否に3日要する
ただ、トランプ氏の戦術でますます気になる点がある。 それは、彼が「分断の政治」に訴えていることだ。もちろん、仮想敵と対立の構図を作り出すことは選挙戦の常でもあるが、トランプ氏には人種差別を根底に据えているかのような言動が目立つ。 数年前までは「(ケニヤ人の父を持つ)バラク・オバマ大統領は米国人ではない」と主張し、出生証明書の提出を求める運動を展開している。2011年に行われた毎年恒例のホワイトハウス記者クラブ主催の晩餐会では、オバマ大統領がその点に関して出席者の一人だったトランプ氏を揶揄し、来賓が爆笑に包まれる姿が動画を通して全米に配信された。今回の予備選でも「(カナダ生まれの)クルーズ氏には大統領資格がない」と提訴する可能性に言及した。 ちなみに、合衆国憲法第2条は大統領が「生まれながらの米国市民」でなければならないと定めているが、オバマ氏もクルーズ氏も米国人の親を有しており問題はない。 3月11日にミズーリ州セントルイスで開かれた集会では、黒人活動家がトランプ氏の支持者と小競り合いを起こし、警備員に乱暴に押さえつけられる様子が全米で報じられた(同地では2015年8月に黒人少年が複数の白人警官ともめた末に射殺されている)。同様の事件はノースカロライナ州ファイエットビルなどでも発生している。人種差別発言に抗議する人々がトランプ氏の集会に押し掛け、トランプ氏が「彼らをつまみ出せ」「ママの所にお戻り」と排除する光景は、もはや定番になりつつある。トランプ氏は支持者による暴力行為を擁護する発言を繰り返している。 2月25日に白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」の元最高幹部デービッド・デューク氏が「トランプ氏は移民問題に強く、メディアの嘘を暴いて白人社会を発展に導く候補だ」と支持表明した際には、拒否する姿勢を明確にするまで3日を要している(1984年にKKKがレーガン大統領の再選を支持した際、同大統領は強い文言で、即座に拒否を表明している)。