子どもより親を悩ませる自由研究の“自由”とは? 小島慶子が35年経って気づいた本当の意味
40年前、私たちの親の時代には【子どもがいる世帯は7割】でした。ところが今は【子どもがいない世帯が6割】。社会は大きく変わっているはず? ……と思いきや、給料は上がらないのに物価は上がり、男女の賃金格差と雇用格差はあいかわらず。暗くならざるをえない状況だけど、どうしたら少しでも豊かな人生を送れるのか、家族や友人たちとどう楽しい時間を持てるのか、小島慶子さんと考えていく連載です。 【こちらも話題】「自由研究が廃止になった学校が多数!?」激変している令和の小学生の夏休み、親たちのリアルな“本音”とは……
子どもより親を悩ませる自由研究の“自由”って?
子どもの頃、夏休みの自由研究を手抜きしたせいで、人生に大きなダメージを受けた人はほとんどいないでしょう。先生に叱られたくらいで。なので、子どもの自由研究を親が必死になって仕上げてあげる必要はないと思います。では、夏休みの自由研究はムダなのか。どうもそういうわけでもないらしいのです。 今は、進学塾などが提供している自由研究サービスがいろいろありますよね。昔とは様変わりです。検索すると面白そうなテーマがいろいろ例示されていて、何を調べればいいかまでちゃんと書いてあります。楽々~。これなら子どももテーマ探しに困りません。改めて気づいたのですが、自由研究は体験の機会を作るためのものなんですね。 「普段と違うことをする」って、それだけで得るものがあります。そうした体験の積み重ねが知的好奇心や課題解決能力を育み、大人になってからの人生を豊かにしてくれることがわかっています。自分の子ども時代を振り返ると、もちろんそんなことは全く意識せず、学校に言われるままに遠足に出かけたり運動会に参加したり、親の勧めで習い事に行ったりしていました。ありがたいどころか、むしろめんどくさいと思っていましたが、ムダじゃなかったのです。 いま私は飛鳥時代にハマっており、古代史を調べるのが楽しくて仕方ないのですが、高校2年生の修学旅行で奈良の明日香村に行った時には、全然良さがわかりませんでした。「おっきな石しかなくてつまらない。何のためにこんなところに来なくちゃならないのか」などと文句ばっかり。 50代になるまでその体験が貴重な学びになっていたことに気づいていなかったのですが、1人で何度か明日香村を旅するうちに、17歳で訪れた時の僅かな記憶が自分と明日香の地を繋いでいることを実感しました。「行ったことがある」「やったことがある」って、それだけで世界を広げてくれるのですね。だから自由研究も、やらないよりはやった方がいいのです。