米共和党に「変節漢」続々、予備選圧勝のトランプ氏に露骨な接近 義理人情外れた振る舞いに冷ややかな視線【ワシントン報告⑮米大統領選】
▽「毎日が選挙活動」 同じサウスカロライナ選出で、スコット氏の同僚に当たるグラム上院議員の動きも複雑な受け止め方をされている。共和党はウクライナ支援より、不法移民を防ぐ国境警備の強化を訴える意見が強い。外交に明るいグラム氏は本来、ロシアが侵攻したウクライナ支援に前向きな立場だったが、トランプ氏が支援に消極姿勢を示すと、急きょ同調し「(メキシコとの)国境警備に目を向けるべきだ」と節を曲げた。 グラム氏の転向は、今に始まったことではない。2016年大統領選でトランプ氏が勝利した頃は、国際協調に後ろ向きなトランプ氏をたしなめる発言もあったが、次第に取り込まれ、最近はトランプ氏との距離の近さを自らの政治力としている。見通しが立たないウクライナ支援協議が一時、大詰めを迎えた際も、「トランプ氏は断固支援に反対している」とメッセンジャー役を務め、支援策を頓挫させた。 スコット氏やグラム氏を批判することはたやすいが、選挙が最優先という議員一般の行動原理を考えればやむを得ない面もある。連邦議会議事堂を歩くと、議員はまことに多忙だ。週末地元に帰り支援者を回るため、平日は予定をびっしり詰める。有権者の動向には極めて敏感。特に任期2年の下院議員は「毎日が選挙活動」(下院スタッフ)と言われ、共和党議員にとってトランプ氏の支持票は死活的に重要である。
▽筋を通す それでも無節操な態度は見透かされる。共和党の指名争いに加わったニュージャージー州のクリスティー前知事は2016年選挙でトランプ氏を支持したのに、今回は批判に転じた。だが支持は広がらなかった。党上院トップのマコネル院内総務も、トランプ氏支持を表明した。口も利かない仲だっただけに意外感を持って受け止められたが、「トランプ氏が圧勝したという予備選の結果を踏まえ、党の結束を優先した」(民主党系の選挙アナリスト)とみられている。 すり寄りが目立つ中、議会襲撃事件でトランプ氏と決別したペンス前副大統領の3月の不支持表明は、筋を通した形で逆に目を引いた。