斎藤元彦氏を見捨て、"無所属の対抗馬"を送り出して大惨敗…兵庫県知事選挙で撃沈した「本当の敗者」の正体
■「自民や野党よりもマシ」という有権者の判断 都市圏としての大阪の人の動き、大阪市内に周辺の市から毎日、大勢が行き来する「人流」を考えれば、新型コロナの対策は大阪市だけで完結するわけではない。市と府が一体になって対応しなければならないことは至極、当然のことだ。 大阪府だけでコロナ対応が完結するわけではないが、都道府県単位で対応策を決めている以上、府市一体で取り組む姿勢を鮮明にしている維新のほうが、府市バラバラな野党よりもマシである。 そう有権者が判断し続ければ、ゆるい支持は一定程度、続くことが予想できる。 ■“途切れたレールの先”を作れるのか 敷かれたレールを歩んできた吉村にとって最大の転機は松井の引退だろう。 「これからは、お前たちの時代や」 二度目の大阪都構想住民投票が否決された直後、松井は吉村にそう告げて、政界を去ることを決めた。 この瞬間、維新にとって最初のフェーズが終わりを告げた。見ようによっては着々と敷かれたレールを歩み続けてきた吉村は、初めて政治家として好むと好まざるとにかかわらず、リーダーとしての孤独を引き受け、自分ひとりの力で歩かなければいけなくなった。 そこから4年――。代表選に際して、彼が掲げた方針は果たして原点回帰だった。逆風のなか、維新第二世代のリーダーは課題を抱えながら進むことになる。 今の維新では誰が代表になっても、全国政党化はかなり難しい課題だが、全国区となった吉村が就任したところで大阪色はかなり強まる印象を与えてしまいかえって票が逃げてしまうかもしれない。原点回帰も同じ効果をもたらす可能性のほうが高い。加えて来年夏の参院選で党勢回復が果たせなければすぐに責任問題が浮上するだろう。しかし、その先は……。 第一世代が築いたレールの先を作ることができるか否か、真価は新たな責任とともに問われることになった。 ---------- 石戸 諭(いしど・さとる) 記者/ノンフィクションライター 1984年、東京都生まれ。立命館大学卒業後、毎日新聞社に入社。2016年、BuzzFeed Japanに移籍。2018年に独立し、フリーランスのノンフィクションライターとして雑誌・ウェブ媒体に寄稿。2020年、「ニューズウィーク日本版」の特集「百田尚樹現象」にて第26回「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した。2021年、「『自粛警察』の正体」(「文藝春秋」)で、第1回PEP ジャーナリズム大賞を受賞。著書に『リスクと生きる、死者と生きる』(亜紀書房)、『ルポ 百田尚樹現象』(小学館)『ニュースの未来』(光文社)『視えない線を歩く』(講談社)『「嫌われ者」の正体 日本のトリックスター』(新潮新書)がある。 ----------
記者/ノンフィクションライター 石戸 諭