〈元エリート検事が準強制性交等の疑いで逮捕〉「なぜ5年も経ったこの時期に事件化した?」「セクハラ、パワハラは多い?」ヤメ検弁護士に訊いた“ここが変だよ検察庁”「悩みを相談できる機関が庁内に存在しなかった」
これまでセクハラ問題を見聞きしたことはありましたか?
――組織風土改革の一環とは、どんなことでしょうか。 そもそも検事には任官と同時に検察事務官というアシスタント的な存在がつきます。一般企業に当てはめれば、新入社員にいきなり役職がついて先輩社員を部下として指揮するような状態です。 これまでの勉強で得た知識をフル回転しながら担当事件に携わり、事務官にも適切に指示を出さなければいけません。それでいて上司からは「指導教育」と称する叱責を受けることも多々あり、これをパワハラと受け取る方もいるでしょう。 また、一番大きな問題は、こうした個々人の検事が抱える悩みを相談できる明確な機関が検察庁内に存在しないことです。 ――一般企業内にあるような、社内相談窓口的なものがないと? 少なくとも私が在職時は明確なものはありませんでした。それぞれが個人で抱えるか、同僚などに相談するかしかないのです。私も実際、上司から人前で怒鳴られ非常にきつかった時期もありましたが、私は「指導」と捉えて励みにしました。 ――セクハラ問題なども見聞きしたことはありましたか。 具体的なことは差し支えますが、検察庁の飲み会の席で、男性検事が不適切な発言をするセクハラ行為があり、それに関する聞き取り調査があったことを聞いたことがあります。報道もされていますが、その男性検事は減給処分になり、また、依願退職したようです。 ――そもそも、検事たちの間での飲み会はよく行われるものなのでしょうか。 コロナ以降はどうかはわかりませんが、コロナ前はよく行われていた記憶があります。大人数だったり少人数だったりですが、比較的、お酒を飲むのが好きな方は多い印象です。
「検察庁内の上下関係はとても強いものです」
――今回、北川容疑者は自身の官舎内で酒に酔い身動きが取れない部下の女性に性的暴行を加えたた疑いが持たれています。官舎内でそのような犯行は可能なのでしょうか。 検察庁内の上下関係はとても強いものです。これは憶測でしかありませんが、拒もうものなら立場が悪くなるなどの理由から、拒みきれなかった可能性はあり得ると思います。 今回、高検が逮捕に踏み切ったということは、確実に起訴できるだけの証拠があってのことでしょう。被害女性の証言だけではなく現場の音声とか、LINEなどのやり取りといった物証があるのではないかと推測します。 ――一連の報道を受けて、率直にどう感じられましたか。 大阪高検大阪高検が逮捕に踏み切るのは異例中の異例です。 しかし2019年に広島地検の男性検事が自殺し、遺族が「80時間を超える時間外労働や上司からの強い叱責が原因」と一般企業の労災にあたる「公務災害」を申請したことに対し、法務省は昨年これを認定しました。 また、2022年には仙台地検の庁舎内で男性検事が自殺未遂、2023年には甲府地検の男性事務官が自殺して遺族が国賠訴訟を起こすなど、パワハラ絡みの問題が立て続けに明るみになりました。そういった意味で膿を出し切るタイミングにきたのではないかと感じます。 ――北川容疑者の事件以外にも、まだ出しきれてない膿があるのでしょうか。 それはわかりません。ただ、パワハラ的な問題は明るみになっていないだけで、まだまだあるのではないかなとは想像します。 私自身の体験だけでなく、指導と称した強い叱責を同僚たちが受けているのを見聞きしたことはありましたから。 私が検事経験者として願うことは、やはり職場環境の悩みを打ち明ける相談窓口などを検察庁内に設置し、風通しのいい組織風土へと生まれ変わってほしいということです。 取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 「集英社オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。 メールアドレス: shueisha.online.news@gmail.com X(Twitter) @shuon_news 取材・文 集英社オンラインニュース班
集英社オンライン編集部ニュース班