「精神疾患で休職が過去最多」への対策急務、教員に燃え尽きが生じやすい訳 悪循環から抜け出すには
縦割り意識が対策を後回しに
──学校現場が多忙すぎることで、互いをフォローしあえる余裕がなくなっているということですが、解決の糸口はありますか。 学校がいろいろな仕事を担わされすぎているという実感は、コロナ禍ではっきりしました。私がメンタルヘルス対策で携わったある自治体では、2020年春にあった全国学校一斉臨時休業の期間中、教員の傷病休暇と休職者の発生は激減し、休業明けには激増しました。業務負担の軽減化と同時に、メンタルヘルス対策としての環境改善も働き方改革の軸とすべきです。 ──しかし、教職員のメンタルヘルス対策については、文科省の対策会議が2013年3月に「教職員のメンタルヘルス対策について(最終まとめ)」を取りまとめて以来、10年間見直しされていません。大石先生は当時、対策会議のメンバーでもありました。 働く人の心の健康問題や職場改善、復職支援といったことは保健医療福祉分野というイメージが強く、教育分野では自分事になりにくかったのではないでしょうか。自治体でも働き方改革と教員のメンタルヘルス対策を包括的に取り組んでいる自治体はまだ少ないでしょう。 検討会議で最終提言が取りまとめられたのち、私が関わる自治体ではメンタル疾患が発生しやすいハイリスク期間の異動後1年を念頭に置き、異動予定者を対象に予防的な介入を行ったり、管理職向け研修の見直しなどに取り組んだ結果、休職者のうち精神疾患が占める割合を減らすことに成功しました。 ところが数年後、数字は逆戻りしてしまいました。保健師を中心にケア体制を整えたり、管理職向けのラインケアの手引きを作成したりと試行錯誤していますが、一向に効果がありませんでした。 働き方改革の議論が進み、教員の業務量が整理されれば多忙感が弱まり、複雑な業務であっても先生方が“報われる”気持ちが増えてくれば休職者は減るのではと期待しています。ただ、改革がなかなか進まないことによって生じる現場の負担を考えると楽観できません。