任天堂、ピーチ姫が主人公の「プリンセスピーチ Showtime!」が映す意味深い一手 かわいらしいけど「ガチのアクションゲーム」
そのなかで特に注目したいのが、いまアクションゲームで流行している「パリィ」や「ジャスト回避」が採用されている部分だ。 パリィは、相手の攻撃に合わせてタイミングよくボタンを押すと受け流して反撃ができるというもの。ジャスト回避は、ギリギリで敵の攻撃を避けることでチャンスが生まれるというものだ。 この要素がはやるのは当然である。なぜなら、リスクがある状況でアクションを成功させて大きなメリットを得るのは、アクションゲームの醍醐味といえるからだ。どちらも起死回生の一手のようなもので、プレイヤーがうまくなったと感じやすい魅力的なシステムでもある。
当然ながら、パリィやジャスト回避はだいぶ難しい要素である。『プリンセスピーチ Showtime!』はそれを噛み砕き、難易度を下げつつも、演出やサウンドでその気持ちよさを子どもたちにも味わわせようとしている。 ■ワイヤーアクションなどの要素も これ以外にも、隠れつつ進むステルスアクションのストレスを取り払ったものや、素早く移動するワイヤーアクションを遊びやすくしたものなど、現代のアクションゲームらしい要素を取り揃えている。
つまり本作は、「アクションゲームの魅力をいつもと違う層にも味わってほしい」といった目論見があると考えられる。一方で舞台演劇、パティシエ、男装の麗人となる剣士など、表面的には女児に好まれそうな要素を詰め込んでいる。 もっとも、さまざまなピーチ姫の変身において、パティシエだけは演劇とも関連が薄くアクションゲームともほど遠い内容で安易な印象を受けた。ただ、それ以外のほとんどはかなりうまくアクションゲームを翻案できているだろう。
もともと任天堂が発売するゲームはより多くの層が楽しめる傾向にある。「スーパーマリオ」シリーズはそれこそ誰でも遊べるし、「星のカービィ」シリーズは男児向けの印象が強いがグッズは大人の女性も対象にしている。 ■性別に関係なく楽しめる 『プリンセスピーチ Showtime!』は、より女児向けの印象が強い。しかしただ女の子が好きそうなものを詰め込んだだけではなく、根底にはアクションゲームの魅力がある。ゆえにそういった方向性はありつつも、性別に関係なく楽しめるアクションゲームといえよう。
本作を楽しんだ幼い子どもは、「アクションゲームは自分も楽しんでいいものなのだ」と思うかもしれない。好みや向き不向きはあれど、誰だってどんなゲームに挑戦していいのである。 『プリンセスピーチ Showtime!』はただの優れた作品ではなく、ゲームを遊ぶ人の喜びを広げうる作品なのだ。
渡邉 卓也 :ゲームライター