『神奈川ダービー』をバウンスバックに導いた横浜BCの河村勇輝、苦しい状況でも目指すものは変わらず「優勝です」
シーズン最後に「自分たちが1番強くなった」と言えるように
試合後、コートを後にする河村の表情は明るいものではなかった。前半は素晴らしい内容だったが、後半は39-56とまくられ、川崎の3ポイントシュートが入っていたらあわや逆転という展開だったからだ。 「自分たちがディフェンスを遂行しきれないと、こういった形になるということがわかった試合になったと思います。勝てたことは何より喜ばしいことですけど、自分たちの目標に向かって気を引き締め直して、連勝できればいいなと思います」 「自分たちの目標」という言葉が引っかかった。横浜BCは川崎戦を終えて18勝23敗の中地区6位、ワイルドカード順位は11位。チャンピオンシップ進出の可能性はゼロではないとはいえ、かなり厳しい。そのような状況で定める目標とは何なのか。尋ねると河村は「あ、優勝です」と言った。「そんな当たり前のことをなぜ聞くんだ」と言わんばかりの、心底意外そうな口調だった。 「そこはもうぶらさずに、可能性がある限りはもちろん挑戦していきたい気持ちはあります」。河村はそう言ったところで少し考え込み、「でも」と言葉を続けた。 「高いところ…優勝っていうところをもちろん目指しますけど、目の前にある試合や、目の前にある課題っていうものに向き合いながら、最終的に1番強い…シーズンの最後に『自分たちが1番強くなった』っていうところを表現できればいいなと思っています。今は、自分たちに向き合いながら、課題を1つずつクリアしながら着実に成長していければいいなと思っています」 人生をいたずらに重ねた者は、河村の言葉を「無謀」と受け取るかもしれない。しかし、大学を中退してのプロ転向で日本を驚かせ、ワールドカップでの活躍で世界を驚かせ、さらなる未知のステージに向けて前へ前へと進もうとしている22歳にとって、可能性がある限りそこに全力で挑むという考えはごくごく当たり前のものだ。 今シーズンのレギュラーシーズンは、残り20試合を切った。あまり考えたくはないが『消化試合』と感じられるような試合も各所で増えてくるかもしれない。しかし河村なら、そして横浜BCならば、どんな結果になろうとも最後まで「成長する」という強い意思を感じられるゲームを見せてくれる――。そんな希望を感じさせられる言葉だった。
青木美帆