西山ファーム詐欺事件を主導した元代表逮捕 逃走経路や事件の特徴、今後の焦点は?元刑事が解説
全国から130億円以上を不正に集めたとされる岡山県赤磐市の観光農園経営会社「西山ファーム」の詐欺事件で、愛知県警は13日、元代表取締役の山崎裕輔容疑者(43)を詐欺容疑で逮捕した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏がデイリースポーツの取材に対し、山崎容疑者の逃亡経路や今回の詐欺事件の特徴、今後の捜査の焦点などについて解説した。 県警によると、西山ファームは2015年から転売事業を展開。果物や化粧品を購入すれば配当を上乗せして返金するとうたい、31都道府県の930人から計133億円を集めたとされる。山崎裕輔容疑者の身柄は今年1月にインドネシア当局に拘束されており、今月12日、ジャカルタ近郊で同国当局から、逮捕状を取得している愛知県警の捜査員に引き渡されて日本に向けて出発、翌13日に到着した。 小川氏は「潜伏先のインドネシアから飛行機で移送し、日本の領空に入ってから機内で、詐欺容疑で逮捕したという流れです」と説明した。 同氏は「最初、2020年2月に日本から香港に入り、その後、タイ、ドバイ(UAE)、トルコを経て21年4月にインドネシアに入国し、約3年になる。国際手配の出入国の記録があるということは正規の移動であり、インドネシア入国まではノービザでいられる滞在期間を守っていたと考えられるが、インドネシアでは当然、3年間のビザなどないので不法滞在だったはず。逮捕される前は出稼ぎ労働者に紛れてマレーシアに密入国しようとしていたとみられています。インドネシアでは偽名を使い、最後の方は車の中で生活していたということで、逃走資金等もなく、逃亡を手助けする者もいなかったのではないかとみられます」と経緯を振り返った。 今回の詐欺事件には今までにない特徴があるという。 小川氏は「通常の投資詐欺は現金を渡すことが多く、高齢者が被害に遭うことが多い。それに対し、今回の投資詐欺はクレジットカードでものを買ってくれということで、現金がない者も詐欺に遭っているので、被害者には若い人が非常に多いというのが特徴です。西山ファームには果樹園も事実あったので、クレジットカードを使える会社にはなっている。ただ、それほど大きくはない規模で、月に何千万円、数億円といった取引ができるわけはないだろうと本来なら分かるんですが、そのあたり、そこまでの審査はなかったように思います」と解説した。 今回の被害について、カード会社の保障はあるのだろうか。小川氏は「盗まれたカードを使われたわけではなく、詐欺です。また、そのクレジットカードを使用し、投資にあてており、実際に配当や利益を数回は得ている者もいることから、カード会社が全て補てんということはないと思います。私の過去の取材では、若い人の中に、クレジットカードの支払いが相当な額になって、法的に手続きして破産宣告した方もいると聞いている」と付け加えた。 今後の取り調べの焦点について、小川氏は「この事件では、出資法違反で同社元役員や勧誘役ら5人の有罪が確定している。昨年3月の判決では、3名は、懲役1年、執行猶予3年、罰金50万円の判決を受けている。巨額の投資詐欺事件を主導したとみられる山崎容疑者を調べることで、実際の130億円を超える被害金の行方、使用用途など、さらに事件の核心に迫っていくことになるでしょう。また逃亡経路、それに関与(手助け)した者等の捜査も必要になります」と指摘した。