【漫画家に聞く】サイボーグ兵器にも“美味い飯”を食わせたい……SF×グルメの創作漫画『Giver&Eater』が刺激的であたたかい
謎の生命体「罰」を殲滅することを目的に作られたサイボーグ・カイリは、罰の肉をエネルギー源としている。そのため、カイリのメンテナンスを任された研究者・ダイチは、上官からカイリに罰の肉を食べさせ続けることを命じられた。しかし、罰の肉をいつもマズそうな表情を浮かべながら食べるカイリ。「あんな表情(かお)で飯は食うもんじゃない」。そう憤ったダイチは、罰の肉を使って美味い料理を作ろうと決意してーー。 サイボーグ兵器にも“美味い飯”を食わせたい……SF×グルメの創作漫画『Giver&Eater』 SFバトル×グルメ・料理の掛け合わせが面白いオリジナル漫画『Giver&Eater』が7月、Xに投稿された。作画もよく、続編が読みたくなる力作だが、それもそのはず。作者は漫画家アシスタントとして日々腕を磨き、最近では「週刊少年ジャンプ」のプレゼント応募ページでイラストを担当するなど、デビューへの道を着実に歩んでいる旭岡ツバサさんだ。そんな旭岡さんに、『Giver&Eater』の制作背景など話を聞いた。(望月悠木) ■「企画を半年間出せなかった」 ――『Giver&Eater』誕生の経緯を教えてください。 旭岡:本作は「新企画を半年間何も出せず、ネームが描けない」という苦しい時期に生まれました。そんな時に、漫画志望の友人にバディ作品の没ネームを見せたところ、「良いじゃないですか」と褒めてもらったんです。そこで「このネームの主人公2人のキャラの性格から突出したものを持ってくれくればいいのでは?」と考え、“大食漢”と“料理が得意”という2つを取ってきてキャラを作り始めました。没ネームを見てくれた友人には本当に感謝しています。 ――“大食漢”と“料理が得意”という設定が生きたSF作品でしたね。 旭岡:SF要素のあるバトルアクション漫画にする予定だったのですが、カイリには“大食漢”という設定があるため、「なんでも食べるキャラだから敵を食べたら面白いな」と思い、そこから「それを料理する料理人がほしい。ただ、普通の料理人にはできないよな」と考え、ダイチの研究者兼料理人という設定ができました。「キャラクターの設定を考えていった結果、いつの間にかバトルとグルメを混ぜた世界観ができていた」という感じです。 ――2人のキャラデザはどのように決めましたか? 旭岡:ダイチ視点でストーリーが進行するとはいえ、カイリのほうが動きが派手ですのでカイリに目がいくようなデザインを意識しました。カイリは私の性癖全開のキャラで、近未来チックな服装に、動くと揺れる飾り紐、中性的な美しい容姿と、とにかく好きなものを足しました。もちろん、ダイチも愛をこめたキャラデザになっています(笑)。 作画を担ってくれた頼りになる助っ人 ――ちなみに、本作の敵役である“罰”のデザインについても教えてください。 旭岡:『新世紀エヴァンゲリオン』の使徒など、二足歩行のモンスターデザインを見ながら、「人型に近くて不気味だけどカッコイイ」「いかにも食べられなさそうなデザイン」という部分を意識して作成しました。ちなみに、“罰”という名称は、「一文字で言いやすく、カッコイイ敵の名前がいいな」と思い、それっぽい漢字をいくつか書き出していたところ、世界観の設定と1番しっくりくると考えて選びました。 ――罰や料理など、いろいろなモノが描かれており、作画面ではかなりの苦労が伺えます。 旭岡:作画面では確かに苦労がありました。ただ、今回から3D素材を導入して、食器や調理器具、崩壊したビルなどの作画は3D素材に担わせ、そこは楽をさせてもらいました(笑)。ただ、キャラの作画はとても苦労しました。表情に力を入れていたため、何度も描き直しました。 ――カイリの表情が徐々に柔和になっていく様子が素敵でした。 旭岡:人形に徐々に魂が宿っていくような意識で描きました。カイリが徐々に“人間”になっていく過程にはかなり力を入れました。 ――今後はどのように漫画制作を進めていきたいですか? 旭岡:新人作家の読み切り作品だけを載せた雑誌「ジャンプGIGA」(集英社)の掲載を今は目指しています。早く掲載できるように頑張ります!
望月悠木