お慕いしております!彰子さまの直球の告白 「光る君へ」ファンも涙 「紫の上」と重ねた自分の身の上
帝に思いを伝えた彰子さま 告白のシーンの衝撃
水野:とはいえ、ドラマ本編「中宮の涙」では、ついに彰子さまが帝に思いを伝えるシーンがあり、これはもう衝撃でしたね! たらればさん:いや~…、本当に。あそこはすごい展開でしたねぇ。 水野:まひろから見た彰子さまの姿を伝えていくとき、彰子さま演じる見上愛さんの目にどんどんと涙がたまっていって。「その息づくお心のうちを、帝にお伝えなされませ」と言われた瞬間、流れた一筋の涙。すごすぎました。 リスナーさんからも「火の玉ストレートの告白に泣きました」と感想がありましたが、涙ながらに「お慕いしております」と伝えたのには、わたしも心が揺さぶられました。 漫画家のおかざき真里さんが、<ちょっと待って!彰子中宮さま!いきなりすぎる。ゼロイチな距離の詰め方。漫画でいうとページをめくったら前振りなしの見開きクライマックス、読者もびっくり><けれど優等生一条くんにクリティカルヒット>と表現されていて、「まさにそれ~!」と思いました(笑)。 たらればさん:表現作品にはそれぞれ媒体ごとに「手法」の違いがあって、たとえばマンガにはマンガの、小説には小説の手法と力があるんですけど、いや~、テレビドラマにはテレビドラマの手法と力があるなぁと。そしてそれは「役者の表現力」を使えるからこそなんだな、というのがよく分かりました。 今回は「ファイト一発!」をしていた、道長一行のハードな御嶽詣…みたいな印象的なシーンがあったんですけども、その印象がはるか彼方にいってしまいましたもんね(笑)。 水野:彰子さまの告白に驚いた帝が「また、来る」と言ったのは、わたしの心の中の直秀が「帰るのかよ!」と叫びましたけど(笑)、これも帝らしい受け止め方なのかなと思いました。
「紫の上」と自分を重ね合わせた彰子さま
たらればさん:今回、まひろは【若紫】(『源氏物語』第五帖)を書いていましたよね。 まさか彰子さまが、子どもの頃に入内して育った自分と、光源氏に連れていかれて育てられる紫の上を重ねあわせるとは、びっくりしました。 水野:そこも驚きでした!彰子さまは以前も「光源氏は笛の上手な帝のよう」と言っていました。それに自分を紫の上へ重ねて、作者(まひろ)に「紫の上は光源氏の妻にしてほしい」と願ったんですね。物語の解釈は本当に人それぞれなんだなぁと感じます。 たらればさん:一条帝と彰子さま、やっぱり二人とも、これまではどこかで亡くなられた定子さまのことが頭にあったんだと思うんですよ。 彰子さまは自分のことをずっと「身代わり」だとか、「父親による政治的な役割のみでここにいる存在だ」、と思っていたのかもしれませんが、あれから約7年、今回で「いや、そうではなく、大切なのは自分自身がどうしたいかなのだ」と気がついたということですよね。「ハレルヤ!」ですよ、まさに。 水野:そういえば、彰子さまの藤壺にお渡りになるとき、一条天皇が舞い落ちて溶けてゆく雪を見つめていましたよね。この表現は……。 たらればさん:はい。あそこで「ああ、一条帝はやはり定子さまを思っているのかなぁ」と想起しました。 『栄花物語』によると、定子さまの葬送の日も雪でしたし、清少納言が御簾を掲げて見せたのも「香炉峰の雪」で、一条帝が定子さまと一緒に雪山を作った思い出の日も雪でした。定子さまと雪は関係が非常に深いので。 水野:定子さまを幸せにできなかったと自分を責めていたところから、少し解放されたのかなぁ、素敵な思い出として思い返せるようになったのかなぁと感じました。 たらればさん:この二人の関係と【若紫】執筆をあわせてくるの、すごいシナリオと演出だなと思いました。 【若紫】って、紫の上との出会いもそうですが、藤壺との密通など、見どころがたくさん盛り込まれている帖なんですよ。それにまんまと引っかかって情緒が大変なことになっているんですけど。