「インフレ率14~16パーセント」で国民生活はドン底…《止まらない円安》と《個人消費の低迷》で世界に遅れをとった「日本経済」の実態
2024年7月10日、日経平均株価は史上最高値の4万2224円2銭を記録した。その一方で、8月には過去最大の暴落幅を記録し、株価乱高下の時代に突入している。インフレ時代の今、自分の資産を守り抜いていくために私たちはどのような対策をすべきなのか。NVIDIA急成長の背景や新NISAとの向き合い方を見直しながら、日本経済の未来について考えていかなくてはならない。 【漫画】頑張っても結果が出ない…「仕事のできない残念な人」が陥るNG習慣 本連載では世界的経済アナリストのエミン・ユルマズ氏と第一生命経済研究所の永濱利廣氏が語る日本経済復活のシナリオを、『「エブリシング・バブル」リスクの深層』より一部抜粋・再編集してお届けする。 『「エブリシング・バブル」リスクの深層』連載第32回 『6月の「定額減税」は大失敗に終わった!?…《物価高騰》から国民の生活を守るために「日本政府」がすべき“真の対策”とは』より続く
いまの日本がやれる政策
永濱:円安を止めるために、もっと政府がリーダーシップを発揮すべきというエミンさんの意見もわかります。ただ、アメリカでインフレと高金利が続いているのに、日本だけの政策変更で、円安を止められるのかという問題もあると思います。 アメリカのインフレがある程度収まって利下げが始まるまで、この状況が続くのではないでしょうか。 いま日本がやれる方策として、「為替介入」があります。4月29日、5月2日、財務省・日銀は為替介入を行い、一時1ドル=151円まで円高になりました。 2024年の春闘では平均賃上げ率が5.1パーセントと大幅に上昇しました。「物価と賃金の好循環」が起こりつつあるのはたしかで、個人消費が増えてくれば日銀も利上げに動きやすくなります。 ただ、残念ながら個人消費は4半期で見て4期連続で下がっているのです。
個人消費が冷え込んだ理由
エミン:逆に円安が個人消費の足を引っ張っているという面もあると思います。 日本のGDPの内訳を見ると、内需が弱いのは明らかです。企業はインフレで値上げしているので、企業の売上高や利益は上振れしやすい。でも実質賃金が上がっていないので、値上げした分、個人消費が冷え込んでしまうのでしょう。 たしかに2024年は賃上げムードが高まっていますが、国民が実感しているインフレ率はもっと高いのです。日銀が4月に発表した「生活意識に関するアンケート調査」によると、国民の「実感の物価上昇率」は年率14.2パーセント。前回調査の16.1パーセントは下回りましたが、日本の3月の消費者物価指数の上昇率2.6パーセントを大きく上回っています。 つまり日本の消費者の「実感」では、公式統計を上回る14~16パーセントもの激しいインフレが起きているわけです。 もちろん、本当にそんなに激しいインフレが起きているわけではありません。あくまで実感ベースの話です。 エミン:エミン・ユルマズ。トルコ出身のエコノミスト・グローバルストラテジスト。レディーバードキャピタル代表。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。 永濱:永濱利廣(ナガハマ トシヒロ)。第一生命経済研究所首席エコノミスト。1995年第一生命保険入社。98年より日本経済研究センター出向。2000年より第一生命経済研究所経済調査部、16年より現職。景気循環学会常務理事、衆議院調査局内閣調査室客員調査員などを務める。 『やっぱりインフレ対策としてこれをやるべき…庶民の生活を支え、個人消費を増やす「最強減税」の名前』へ続く
永濱 利廣、エミン・ユルマズ