ついにハイブリッド化。偉大なる「ポルシェ911」60年の歴史を振り返る
2004年にバトンを受けた第6世代のタイプ997は、先代のタイプ996の正常進化版。ただしヘッドランプの形状など、デザイン的には少し先祖返りしている。 タイプ997のトピックは、2008年のマイナーチェンジのタイミングで新開発の直噴エンジンが加わったことと、ティプトロニックがPDK(ポルシェ・ドッペル・クップルング)というデュアルクラッチ式トランスミッションに移行したこと。直噴エンジンは燃費を悪化させずにパワーアップする技術であり、PDKはエネルギーを効率よく車輪に伝える(=省燃費)のための技術だ。 2011年に第7世代のタイプ991が登場。2015年のマイナーチェンジのタイミングで、一部の特別なモデルを除き、エンジンがターボ化される。燃費規制に対応するための措置で、排気量を縮小して効率化を図り、パワーを補うためにターボチャージャーを装着している。 こうして振り返ると、エンジンの水冷化を筆頭に、ポルシェ911の歴史はパフォーマンスの向上と環境問題への対応を両立させる取り組みの連続だったといえる。 だから2018年に発表された現行のタイプ992に、ハイブリッドモデルが追加されたのも、これまでの経緯からして当然の流れだ。興味深いのは、ポルシェがハイブリッドモデルにGTSという、スポーティなグレードを与えたこと。このハイブリッド技術はもともとポルシェがレースで培ってきたものであり、ただの省燃費技術ではなく、高性能を実現するための技術であるとアピールしているのだろう。 最後に、もう一度フェルディナント・ポルシェ博士の偉業に話を戻したい。 ダイムラー・ベンツの技術部長に就任する前、ウィーンの帝室馬車工房ローナー社に勤務していた25歳のポルシェ博士が開発したクルマは、エンジンで発電してモーターで走るハイブリッド車だった。当時のバッテリー技術では実用化できなかったけれど、ポルシェ博士は1900年、いまから100年以上も前からモーターの長所を見抜いていたのだろう。ポルシェ911初のハイブリッド車であるGTSの感想を、博士に訊いてみたい。 ポルシェ911カレラGTS 全長×全幅×全高:4553×1852×TAB(日本仕様は未発表) ホイールベース:2450mm パワートレイン:3.6ℓ水平対向6気筒ターボ+モーター システム最高出力:541ps システム最大トルク:610Nm トランスミッション:8段AT(PDK) 駆動方式:RR(リアエンジン・リアドライブ) 価格:2254万円(税込)