AI採用面接に新人記者が挑戦 顔のない相手が出した残念な評価
「人工知能(AI)との面接、今は普通ですよ。私もきのう受けました」。ある就活生はそう語った。記者は2023年に社会人デビューしたばかり。就活生時代にAI面接なるものを耳にしたことはあったが、「普通」と言われるほど浸透していたとは知らなかった。 【関連画像】AI面接の結果。自信のあった「バイタリティ」も8点に届かず、さみしい結果に 実際、大手企業でもAI面接を導入するケースが増えているようだ。LINEヤフーや大手芸能事務所のホリプロ(東京・目黒)もAI面接を導入済み。企業の採用活動について取材する以上、体験しないわけにはいかない。高評価を得るとの期待を抱きつつ、開発会社タレントアンドアセスメント(東京・港)の門をたたいた。 トライしたのはタレントアンドアセスメントが手掛けた対話型AI面接サービス「ShaiN(シャイン)」。同社の4月2日の発表によると導入実績は500社に達した。スマートフォンやタブレットで24時間いつでも受検できる。替え玉受検対策の顔写真登録や簡単なマイクテストを終えるとすぐに面接スタートだ。 「苦労や困難を乗り越えた経験について教えて」「これまで計画を立てて物事に取り組んだ経験は」。こんな問答をしばらく繰り返した。記者がしどろもどろになるたび、AIに「もっと詳しく教えてください」と突っ込まれる。 聞かれる内容は人間の面接官と大差ないように感じたが、顔の見えない相手に何度も聞き返されると「この受け答えは失敗だったのか」と不安が増していく。相手の言葉に感情がこもっておらず、表情も見られないことが、こんなにストレスを生むとは思わなかった。 ●果たして結果は 面接を終えるまで1時間はAIと格闘したつもりでいたが、実際は30分ほどしかたっていない。AIらしい独特のテンポの会話や意図が微妙につかめない質問に疲れてしまい、実際の時間以上に長く感じたのだろう。 評価項目は「バイタリティ」「理解力」など10個。それぞれ10点満点でスコア化される。「困難に直面しても努力を継続できる」と言われたのはうれしかったが、何と表現力が6.5点どまり。日ごろお世話になっている先輩のわが意を得たりという表情が脳裏に浮かび、ちょっとヘコんだ。 表現力は発言の内容ではなく、受け答えの様子や態度に基づいて評価される「観察項目」に当たる。詳細を見ると「必要な情報を過不足なくまとめられていない」「話が伝わりにくい」と、会社で受けたどんな指摘より率直かつ手厳しい。発言の内容で評価が決まる「質問項目」の結果も全体的にパッとせず、受検前の自信はすっかり打ち砕かれてしまった。