<近江・支える人>第96回選抜高校野球/上 近江鉄道のバス運転手 川越準さん(44) 移動、楽しく心地よく /滋賀
18日に開幕する第96回選抜高校野球大会に出場する近江をさまざまな立場から支える人たちがいる。選手たちを最高の状態で夢の舞台に送り出そうと努力する姿を3回に分けて紹介する。【菊池真由】 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 甲子園での試合はもちろん、合宿や練習試合まで近江野球部の移動を支えているのは、近江鉄道のバス運転手、川越準さん(44)だ。 川越さんと近江野球部との出会いは2018年。その年の夏の甲子園でチームが移動するバスの運転を担当した。その際に多賀章仁監督から車内での選手らへの気遣いや運転技術を気に入られ「来年も来てほしい」と指名された。それから、野球部が移動で同社の貸し切りバスを利用する際はいつもハンドルを握る。合宿中など選手と話す機会があるときには、「頑張っているな」「緊張していないか」と選手らに寄り添った言葉をかける。 川越さんが仕事で意識していることが三つある。一つは多賀監督も認める「選手への気遣い」。心地よくバスに乗ってもらい、試合で全力を出してもらおうと、車内の温度調整をはじめ、ブレーキの踏み方一つをとっても細心の注意を払う。 二つ目は「スケジュール管理」。近江野球部からいつ予約が入っても対応できるよう、この6年間は極力予定を入れないようにしてきた。特にセンバツと夏の甲子園がある3月と8月は予定を全く入れないという。そして最後は「近江へのいちずな気持ち」だ。会社から他校の野球部の送迎を頼まれることもあるが、断ってきた。川越さんは「験担ぎではないが、僕の運をちょっとでも分け与えて1勝につながれば。他の学校を担当し、もしその学校が勝って運を使うのも良くないし」と笑う。 川越さんを引き込むのは選手の活躍だけではなく指導者らの自分に対する心遣いも大きい。「選手だけではなく、監督、部長、コーチ、全ての人が僕にあいさつをしてくれる。多賀監督は、合宿などでチームと一緒に食事をしようと席まで用意してくれる。本当に大事にしてくれていることが伝わる」と話す。 もちろんセンバツでもチームの移動を担当する。選手らが練習に励んでいる姿を眺めながら「一緒にいるとどんどん好きになっていく。滋賀から選ばれた代表として1日でも長く甲子園で活躍してほしい」と顔をほころばせた。