ガレージシャンソンショー、毒性と変態性を強調したシャンソンとは?
シンガー・ソングライターの山田晃士と日本屈指のアコーディオン奏者・佐藤芳明による「ガレージシャンソンショー」。10月13日に、初のDVD発売を記念し渋谷で行うライブを控え、都内スタジオでリハーサル中の2人を直撃した。
造語”ガレージシャンソン”に込められた意味とは?
山田の造語だという”ガレージシャンソン”とは、シャンソンが持つブルジョワジー的要素を排除し、その毒性や変態性の部分を強く押し出したものだそう。 「シャンソンって、ある程度裕福な人が厚化粧し、サロンに集まってやる、みたいな誤解されたイメージで伝わってきた部分がある。でも、ブルースのように、けっしてきれいなところばかりではなく、思いの丈を包み隠さず赤裸裸に舞台上でさらけ出すところにシャンソンがあるんですよね。そういった面もしっかり伝えていきたいんです」 子どものころ、古き良き時代の歌謡曲に親しみ、その後、ロックに関心を広げていったという山田だが、テレビで目にした越路吹雪によってシャンソンの洗礼を受けた。 「お茶の間にそぐわない異物感があった。当時、子どもたちの間でもピンク・レディーが全盛だったんですけど、私は越路吹雪(笑)。そのとき聴いていたグラマラスなロックと越路吹雪さんが同じ地平にいたんです」
そんな山田から「アコーディオンがうまいから」と誘われ、ガレージシャンソンショーをやることになった佐藤。 「友達少ないんで、友達になろうよって言われたら二つ返事な感じだったんですよ」と笑わせるが、アコーディオン奏者としての実力は世界的にもトップクラスといわれる。 「シャンソンには縁がなく、グラムなロックだとかも知らなくて、山田君を通じてそういったものにふれました。面白さを教わりながら、僕も面白おかしくやりつつ、アコーディオンで表現しつつ、今日まできた」 佐藤にとっては、山田の歌のうまさが際立って感じられたという。お互いがお互いをユニットのパートナーとして必要とする、アーティスト同士の運命的な出会いだった。山田と佐藤でなければ、ガレージシャンソンショーは成立しなかったのだ。 最近になって、ミーティングの前などにはランチの美味しい店に連れ添って行くようになったという。 「ランチは混むから11時に待ち合わせようとか、高校生みたいなことを始めまして。でも、そうやると、その後のミーティングがうまくいくことを発見したんですよ(笑)」(山田) 「不思議な感じですよね。友達とも違うかもしれないし、ちょっとおもしろい関係」(佐藤)
ガレージシャンソンショーや音楽について語らう2人からは、まるで素朴な青少年のようなピュアなムードが伝わってくるが、そんな2人がステージで魅せるのは大人が楽しめる本当のエンターテインメントだ。シアトリカルで、2人だけで演じる素晴らしい舞台、そしてホンモノの音楽がそこにある。 最後に、独り言のように山田が言った。 「中身は変なものだったり、とんでもないものだったりするわけだけど、それをいかにリボンで飾って受け取りやすくするか。そういうのが面白いんですよね」 (取材・文・写真:志和浩司)