リズムを掴めばひたすら楽しい! ランチア・フルビア・クーペ(2) 英スタッフを夢中にする活発さ
リズムを掴むとひたすら楽しい 最高の時間
ペダルの配置は、ヒール&トウしやすい。エンジンは素早く反応し、選んだギアで意欲的に駆け回れる。アシストが備わるブレーキは、ペダルに感触を殆ど伝えないものの、制動力は調整しやすい。しっかり踏めば、しっかり効く。 旧式なウォーム&ローラーのステアリングラックは、高めの速度域で締まりが増す。反応はクイックすぎない。大胆なステアリング操作は、サスペンションの安定性を乱す。先を読んで切る角度を滑らかに決めれば、小気味いい回頭性で満たされる。 タイヤは肉厚。カーブの途中に路面の隆起があっても、ラインは狂わない。フロントエンジンの重量配分に、165幅のタイヤでも、アンダーステアはほぼない。リズムを掴むと、ひたすら楽しい。 これでラリーを戦った、かつてのドライバーのスキルには舌を巻く。リアタイヤのグリップを崩し、絶妙な操縦で限界ギリギリのコーナリングを続けたのだから。 フルビア・クーペは、素晴らしいクラシックカーだ。手と足の動きを考え、クルマを操ることで、巨大な充足感を享受できる。乗り心地はしなやか。細いピラー越しに、素晴らしい景色を眺められる。最高の時間を過ごせる。 エンジンルームは広々。主な部品へアクセスしやすい。スペアパーツの入手は、さほど難しくない。英国では、オーナーズクラブの活動も活発だ。
実用性も悪くない 筆者の給料でも維持できる
フルビア・クーペは、実用性も悪くない。筆者の身長は190cm近いが、フロントシートを目一杯下げれば、空間は充分。リアシート側は潰れてしまうが。荷室も広い。スペアタイヤを載せると、だいぶ狭くなるとはいえ。 普段使いでの燃費は、10.0km/Lを少し超える。燃料タンクは38Lだから、こまめな給油は必要だけれど。英国では、クラシックカーの自動車税は免除される。任意保険の金額も、決して高いわけではない。 ボディを保護する目的で、ガレージにはスチール・フレーム付きの伸縮カバーを追加した。うっかりスペアパーツを落としても、塗装を傷をつけずに済む。 やり残しの作業は沢山ある。タイミングチェーンは、そろそろ交換した方が良いだろう。油圧は最近低めだし、稀にエンジンオイルの燃えた白煙が、排気ガスに混ざることがある。フロントのリーフスプリングは、固定が甘くなってきている。 とはいえ、お察しの通り、筆者はこのクルマに夢中だ。活発に走るし、とても美しい。ラリーと結びつく歴史も、好きな気持ちを後押しする。なんとか、筆者の給料でも維持できている。
ランチア・フルビア・クーペ・シリーズ3 1.3S(1974年式/欧州仕様)のスペック
英国価格:2057ポンド(新車時)/1万7500ポンド(約341万円)前後(現在) 全長:3975mm 全幅:1555mm 全高:1300mm 最高速度:167km/h 0-97km/h加速:11.9秒 燃費:9.5km/L CO2排出量:-g/km 車両重量:970kg パワートレイン:V型4気筒1298cc 自然吸気 使用燃料:ガソリン 最高出力:91ps/6000rpm 最大トルク:11.5kg-m/5000rpm ギアボックス:5速マニュアル(前輪駆動)
リチャード・ウェバー(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)