〝魅力ある職場〟どうつくる? 人員確保へ、若手育成に奮闘する北海道のJA
取材先のJAでよく聞く課題が職員の人材不足だ。背景として採用難に加え、若手を中心とした高い離職率が指摘される。人員減少は組合員向け事業の品質低下を招きかねず、対策は急務だ。魅力ある職場づくりへ何が求められるのか。若手職員の人材育成に積極的に取り組むJAを取材した。
「対話不足」に注目 コミュプロの取り組み
JA北海道中央会根釧支所は、若手職員の離職対策として2023年、入組1~5年目の職員を対象とした「根釧JA若手職員コミュニケーション促進プロジェクト」(コミュプロ)を発足させた。JAを超えた職員の交流と対話スキルの向上を目的に、昨年は論理的思考や心理的安全性などについてゲームを交えて理解を深めた。 新年度が始まった2日には、新規採用職員研修の一環として先輩職員との座談会を開いた。新入職員は「仕事で悩んだときはどうしてますか」「1年目にやるべきことは」など次々と質問を投げかけ、JA事業や社会人としての心構えを学んだ。 コミュプロを発案したのは当時、同支所に赴任していた佐久間一歩さん(30)だ。JAの人材確保を巡る状況は厳しく「『応募してくれるだけでありがたい』というJAもある」と危機感を示す。実際、新採用職員研修に参加した新入職員は26人と、昨年に比べて10人以上少ない。「札幌から遠く、地理的に不利で応募が少ない現状はなかなか変わらない。今いる人を離職させないことに力を入れるべきだ」と語る。 では、離職の理由は何か。佐久間さんは「理想とのギャップ、忙しさなど要因はさまざまだが、仕事に対して入組時のような志が持てなくなったからでは」とみる。志を持てるように上司が導けていないことも課題で、根本には「職場でのコミュニケーション不足がある」とする。そのため、コミュプロでは対話力の向上に重点を置く。自由に意見を出すことに慣れてもらい、職場でのコミュニケーションの活性化や組合員との関係構築につなげる。 コミュプロに参加したJAしべちゃ入組5年目の戸羽華寿樹さん(22)は「組合員と話すときや職場で、思っていることが相手に伝わっているか心配なことがある」と話す。研修を通じ「もっと自分から人に話しかけようと思えるようになった。他JAの同世代との人脈がつくれたことも大きい」と仕事との向き合い方の変化を話す。 世代間ギャップを埋める存在として中堅世代の役割も増しており、「係長版コミュプロ」の要望もJAから上がっているという。