同意なしの強制不妊手術「40年以上知らなかった」 戦後最大の人権侵害『旧優生保護法』 国を提訴した夫婦が最高裁で初弁論
【野村太朗さん(仮名・80代)】「しばらくたってから『赤ちゃんができない』ということだけ聞いて、亡くなったから2人目が生まれないという意味で言っているのか、なんでなのかなと分からなかった。だいぶたってから、不妊手術をしたということだと分かった」 【野村花子さん(仮名・70代)】「不妊手術しないでそのままの体でいさせてくれていたら2人目も授かったかもしれないのにと思うと、怒りの気持ちが収まりませんでした。不妊手術をされたことを今でも悔しく思っているんです。なぜ不妊手術を受けなくてはならなかったのか」 花子さんがこの事実を知ったのは、手術から40年以上たった2018年。同じように強制不妊手術で苦しむ人が、裁判を起こしたことがきっかけでした。 なぜ子どもを育てる未来を奪われなければならなかったのか…。
■二審勝訴も国は「不服」と上告
2人は2019年、国を相手取り、損害賠償を求めて訴えを起こしました。 問題となったのは、手術から40年以上がたっていたこと。 民法では、不法行為から20年たつと損害賠償を求める権利がなくなる「除斥期間」という規定があり、国は「2人には損害賠償を求める権利がない」と主張したのです。
手術をされたことすら知らなかったのに、この除斥期間を認めるのか。 一審の大阪地方裁判所は、この法律が憲法違反と指摘したものの、国の主張を認め、損害賠償は認めませんでした。 しかし2022年、二審の大阪高裁は「除斥期間をそのまま認めることは、著しく正義・公平に反する」として、一審の判決を取り消し、全国で初めて国の賠償責任を認めたのです。 長い時間をかけて、やっと救いの手が差し伸べられたものの、国はこの判決を不服として最高裁に上告。結論はいまだ引き延ばされたままです。
【野村太朗さん(仮名・80代 2022年取材時)】「結局、判決は出たんですけど解決というところまではいっていないし、最初は早く終わるものだと思っていたけど、今もこれだけ時間がかかっているのでおかしいなと思っています」 大阪高裁の勝訴判決から2年。ようやく5月29日、最高裁で弁論が開かれました。これは2人が法廷で裁判官に意見を直接述べられる、最初で最後の機会です。 【野村太朗さん(仮名・80代)】「2年ずっと待たされていたことに対してはおかしいなと思う。まさかそういうことを闇に葬ってしまおうと思っているんじゃないかという風に。ずっと後回しにされているのかなと思いました。例えばね、私たちがこの期間に亡くなってしまうかもしれない。そういうことも考えて早く結論を出してほしいなと思います。本当に長いこと待たされています」
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