ロッチ・コカドさんが43歳で見つけた趣味は「ミシン」。大量生産で綺麗なものより「不完全さ」が自分らしい【インタビュー】
ミニ財布やサコッシュ。アメリカ古着がアイデアの源
ーー今日も作品を持ってきていただきましたが、色や素材違いの布の組み合わせが素敵です。こういうセンスはどこから影響を受けたものなのでしょう? 50~60年代のアメリカの古着が好きで、古着屋で働いていたのもあって、ずっと見たり着たりしてきたのがアイデアのベースにあります。あの時代の古着って、こういう独特な布の切り替えや色使いが多いんですよね。基本、自分が持っている古着の空気感に合うものを作っています。 ーー特に思い入れが深いものはありますか? うーんとね…この、アロハシャツを作った時の残りで作ったミニ財布ですね。インスタに載せたら、サーフィンの先生やイモトアヤコとかから次々と「ほしいんですけど買えますか?」って連絡があって「いやいや、お金はいいんでもらってください」と。周りの人からの反応が多くて、嬉しかったですね。改良しながら、同じ型で布違いで何個も作りました。 ーー布との出会いも楽しそうですね。 アロハの布も、売れ残りのワゴンセールの中から、2.5メートル2000円くらいで袋に入っていたのを見つけたんですよ。当時は特にアロハを作るつもりはなかったんですけど、この柄めっちゃいいやんと思って買っておいて、翌年にそういえば!と思って、アロハを作りました。初めてメートルでまとめて買ったのはこのジャガード柄の布で、サコッシュなどのバッグをいっぱい作りましたね。 ーー生地は、日暮里のどこで買われてるんですか? やっぱり「トマト」さんですねぇ。上の階にあるアメリカのインポートもののコーナーを見て、そこから1階まで降りていって、他にも「NAGATO」さんとか歩きながら気になるお店に入って。途中で喫茶店で休憩して、撮っておいた布の写真を見返してどれを買おうか決めて、買いに行って帰る。だいたい3時間くらいは日暮里にいますね。生地以外は新宿の「オカダヤ」さんが多いです。
洋服は滅多に買わなくなった「ものを増やさなくても満足」
ーーリメイクやリペアは、エコの観点からも最近注目が高まっていますが、コカドさんは自分で作るようになって、買い物の価値観に変化はありましたか? 洋服は滅多に買わなくなりました。買うより、服の縫製を勉強するために服屋に行ってますね。布の処理の仕方とか、自分で作るまでは気にしていなかったことが気になるようになってきて、いつもメジャーを持ち歩いていますね。店員さんからすると嫌な客かもしれないですけど…。 リメイクは、シャツやスラックス、キャップなど色々やりました。デザインが気に入っても、自分にしっくりくるサイズってなかなか出会えないじゃないですか。だから、気に入って買ったけどあまり使ってなかったやつを、切ったり縫ったりしてちょうどいいサイズにできる。新しく買ったような感覚になるし、ものを増やさなくても、今手元にあるものをさらに活用できるようになるから、満足感が高いんですよね。 コーチジャケットも刺繍を入れるだけで、本当に愛着が湧いて、よく着るようになりました。何の知識もなく暇つぶし感覚で、移動時間や収録の控室でチクチク縫ってましたね。 僕はミシンも完全に独学なので、試行錯誤しながらでミスはあるんですけど、大量生産でキレイに作られたものより、その不完全さが味になって自分らしくいられるというか、よりフィットしているなと感じますね。 ーー最近は、編み物で心の平穏を得たり、集中力が高まったりすると話しているアスリートなどが増えていますが、コカドさんもメンタル面での良い影響は感じますか? ミシンをやってる時、他のことは一切考えないので、脳が休めているのか、スッキリしたり落ち着いたりするのは感じますね。一番効果のあるストレス解消法かもしれないです。マインドフルネスや瞑想にハマる人もこういう気持ちなのかな?と。ゴルフやサーフィンも自然の中で身体を動かすから爽快ですけど、ミシンはもうちょっと内面的なスカッと感がありますね。