「弱かったけど、ずっと一緒に戦ってきた」残留オファーを断り中日退団のビシエド…盟友・柳裕也が初めて明かす「早朝6時の空港見送り秘話」
見送った柳の思い
断腸の退団決意。そうした競技者としての思いと、9年も住んだ街を去る、人としての思いは別である。それはビシエドを見送った柳も同じだった。 「僕もニュースを見て退団を知ったんです。ファームで一緒でしたけど、普段はそんな話はしませんから。僕が一軍にいたら(セレモニーで会えて)行ってなかったかもしれませんが、とにかく最後にあいさつして終わりたかった。本当は前の晩に家に行ってやろうかとも考えていたんです。でもよく考えたらどこに住んでるか知らないや、って……」 柳が投げる後ろにはいつだってビシエドが守り、打席ではここぞの一打を打ってくれた。選手会長だから? 頼りになったから? 早朝の見送りの理由は、そのどちらでもないと言った。 「外国人とかも関係ないです。タンケ(ビシエド)が嫌な人間なら、それはそれで行ってない。ずっと4番で一塁。弱かったけど、ずっと一緒に戦ってきた。だから今までありがとうって言いたかったんです」
二人にしか分からない思い
万年Bクラス。悔しさも歯がゆさも共有してきた。 柳は自分が見送ったことを自身のSNSなどには発信していない。同じく取材のため空港にいた新聞社の記事で伝えられた。 「まさか記者さんがいるとは思わなかったので」 誰かに知ってもらいたくて足を運んだのではない。柳とビシエド。低迷期を支えた2人にしかわからない思いがある。だから悩んでいるのはわかっていても「残ってくれ」とは言わなかったし、別れを「寂しい」とも言ってない。
最後に手渡したもの
互いに「ありがとう」。その先にあるのは、「来年、どこかで会おう」。柳は「家族で食べてね」と紙袋を手渡した。坂角総本舗のえびせんべい「ゆかり黄金缶」。愛知県では誰もが知る手土産の王様である。ビシエドはニヤリと笑い、空港ゲートをくぐっていった。
(「草茂みベースボールの道白し」小西斗真 = 文)
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