人体って宇宙だったんだ。パリの医療を追う映画『人体の構造について』レビュー
自分の身体の内側って、どうなっているんだろう? 最も近いのに、意外と知らない人体の構造。それを、ありありと見せつける衝撃のドキュメンタリー映画『人体の構造について』が公開されています。以下、作品の一部内容を含みます。 【全画像をみる】人体って宇宙だったんだ。パリの医療を追う映画『人体の構造について』レビュー
手術の現場を追う、衝撃の映像
舞台は、フランス、パリの5つの病院のオペ室。普段見ることがない実際の手術現場をカメラが追い続けます。 脳の手術から始まる本作。痛い痛い、と観ているこっちはヒヤヒヤものなのですが、スクリーンに映し出された医師と患者は、術中平然と世間話をしています。 脳を手術するなんて、生死を分ける一大事に思えます。しかし、妙に整然としたこの一幕は、人間の身体ってなんだかすごい、そんなことを観ている人に印象づけます。なんなんだこの映画は! 開始早々、引き込まれてしまいます。 その後も、大腸、眼球、背骨などのオペや、帝王切開のシーンが続きます。メスが入り身体が開くと、見たことのない景色が。特に目を見張るのが、内視鏡を使った身体の内側の映像です。もうこれ、小さな宇宙です。 あまりの生々しさから目をそむけたくもなるのですが、次第にこんなに近い身体のことを、少しも知らないことに気付かされます。人の眼球を、まじまじと見たのは初めてでした。 そして、メスで開かれて医療器具で処置されても、生きている人間の生命力に、神秘的な感動を覚えます。 本作では手術だけでなく、認知症と思われる人々の姿や、死体安置所でのシーン、極限状況でオペに取り組む医師の心境など、「生命」を多角的に描きます。
描かれるのは、生命の尊さ
衝撃的な映像が多いので、観る人を選ぶ作品だと思います。しかし、そこで描こうとしているのは、人間が生きていることの尊さです。感動的なストーリーや、壮大な演出とは全く異なる、徹底したリアルの追求という方法で生命への賛美を表現した本作は、一見の価値があると思いました。 『人体の構造について』は、11月22日から、ヒューマントラストシネマ渋谷&有楽町、ほか全国のシアターで上映されています。 Source: 『人体の構造について』公式サイト
小野寺しんいち