萩尾匡也外野手「もう必死」試行錯誤しながら放った2号逆転2ラン
◆JERA セ・リーグ 巨人2―1広島(14日・東京ドーム) 巨人が広島に逆転勝ちを収め、23年6月以来となる6連勝を飾った。1点を追う3回、萩尾匡也外野手(23)が値千金の2号逆転2ランをたたき込んだ。先発・高橋礼投手(28)が7回1失点の好投を見せ、バルドナード、大勢とつないでリードを守り切った。貯金は今季最多の4に伸ばし、首位・中日にゲーム差なしの2位とした。この日でセ・リーグ5球団との対戦が一巡し、16日から甲子園で伝統の一戦を迎える。 無数のフラッシュを浴び、萩尾のつぶらな瞳が輝いた。初々しくはにかむニューヒーローがお立ち台に呼び込まれると、4万1442人の大観衆の拍手が注がれた。「去年、ファームの試合で東京ドームのヒーローインタビューに立たせていただいたんですけど、その倍以上の歓声でうれしく思います」。大卒2年目。本拠地1号で勝ち取った場所には、格別な景色が広がっていた。 1点ビハインドの3回1死一塁。広島・ハッチの高めに抜けたスライダーを逃さず、左中間席中段まで運んだ。3日の中日戦(バンテリンD)でのプロ1号以来となるアーチは、値千金の逆転2ラン。昨季は11試合で1安打だった若武者の成長に、阿部監督は「対戦したことのない投手とずっと当たっているし、日々勉強していると思う。それをどんどん生かしていってほしい」と期待を寄せた。 殊勲打には伏線があった。4試合連続で1番に抜てき。過去3戦の第1打席は三振しており、二岡智宏ヘッド兼打撃チーフコーチから「セカンドゴロを打ってこいよ」と気楽に背中を押されたが、見逃し三振に倒れた。同ヘッドからは「次はバットを短く持ってみたら」と再び助言を受け、今度はコンパクトに捉えた。萩尾は「相変わらずの三振からスタートして、もう必死でした」と笑った。 「4・14」は忘れられない日だ。熊本地震で震度7の「前震」が観測されてから丸8年。文徳高に入学直後で、練習帰りの電車内で揺れを経験した。約2時間車中に閉じ込められ、家の扉を開けると家財が散乱していた。練習は約1か月間中断となり「自分も避難所生活をしていたので、水と電気がない生活の苦しさは痛感してきた」と当時を振り返る。今年1月に能登半島地震が発生し、「何かできることがあれば。野球を通じて貢献したい」と思いも胸に秘めた決意の1年。大切にする日に、故郷と被災地へアーチを届けた。 チームは23年6月10~16日以来となる6連勝。そのうち4試合が逆転勝ちと、チーム全体に粘り強さも身についてきた。阿部監督は「もうね、できすぎっちゃできすぎだし、もう一回気を引き締めて来週からやっていきたい」と前を向いた。萩尾も13試合で打率2割6分8厘、2本塁打、6打点。新切り込み隊長として徐々に地位を築きつつある。「今年は投手の特徴をしっかり見てから打席にいけている。去年からやっとけばよかったなと思うんですけど、その失敗があってこそ、今できている」。苦難の1年を経て大きく成長した背番号12が、力強く巨人をけん引している。(内田 拓希)
報知新聞社