総合力の高さは示し、出雲駅伝6位の早稲田大 伊藤大志主将「チームができあがる最後のピースは、僕と智規の走り」
10月14日の第36回出雲駅伝で、早稲田大学は6位だった。「将来的には優勝争いをするチーム」をめざす花田勝彦監督は、1、2区にエース格を配置して、選手に先頭を走る経験を積ませたいという狙いがあったが、不発に終わった。ただ後半区間で巻き返し、チームの総合力が上がってきていることを証明する結果でもあった。 【写真】山口智規から12位で襷を受けた伊藤大志、この時点で冷静さを欠いてしまった
山口智規から12位で襷を受け、冷静さを欠いた
1区に6月の全日本大学駅伝関東地区選考会(10000mタイムレース)で日本人トップの走りを見せた山口智規(3年、学法石川)、2区に9月の日本インカレ男子5000mで日本人トップとなり、主将を務める伊藤大志(4年、佐久長聖)と、前半区間から攻めのオーダーを組んだ早稲田大。花田監督はレース前日のプレスインタビューで、「いつも選手たちに言っているのは『1=1』。チームが持っている力をしっかり出していきたい」と意気込みを語っていた。 ただ、結果的には2人とも、本来の力を出したとは言えなかった。 山口については「プレッシャーもあったのかなと思います。スタート前も、あまり良くないときの山口だったので、ちょっと心配はしていました」と花田監督。気温が30度近い中でスタートし、最初の1kmから3分を超えるスローペースに。最後のスパート勝負で区間賞が決まる展開となり、山口はトップの青山学院大学と29秒差の12位で伊藤に襷(たすき)をつないだ。 伊藤は、この順位でスタートすることを想定していなかったのだろう。「襷をもらった瞬間に吹っ切れちゃって、前を追うことしか考えられなくなってしまった」と、最初の1kmを2分36秒のオーバーペースで入ってしまった。「今まで走ったことがないぐらいのペース。普段だったら絶対にしないんですけど……『自分のところでできるだけ前に』と欲張ってしまった。冷静に『残りの5区間で(差を)詰める』と考えるべきでした」。順位を一つ上げたものの、区間10位に終わった。
総合力を証明した長屋匡起と工藤慎作
3区と4区はともに3大駅伝初出走の2人、山口竣平(1年、佐久長聖)と藤本進次郎(3年、清風)に任された。「山口竣平は高校時代からロードに強い選手。藤本は直近の早稲田ロード記録会が非常に良かった(5kmを13分55秒)ので、一度試してみたい」と花田監督は起用意図を明かした。 山口竣平は区間11位と苦しんだデビュー戦となった一方、藤本は京都産業大学と大東文化大学をかわしてチームの順位を11位から9位に。個人としても区間7位で粘り、花田監督は「追い風区間で暑さが心配でしたけど、しっかりまとめてくれた」と評価した。 チームの中間層が確実に力をつけていると実感できたのは、5区と6区の好走だった。5区の長屋匡起(2年、佐久長聖)は昨年の出雲でアンカーを務めたが、全日本と箱根では出番がなく、1年ぶりの駅伝。区間3位の走りで帝京大学を抜くと、最終6区の工藤慎作(2年、八千代松陰)がさらに順位を6位まで押し上げた。個人としては國學院大學の平林清澄(4年、美方)に続く区間2位。駒澤大学の篠原倖太朗(4年、富里)や青山学院大学の太田蒼生(4年、大牟田)といった学生トップクラスのランナーをも上回った。 「途中で差し込みっぽくなってしまって、タイムが伸びなかったかなというのはあるんですけど、太田選手や篠原選手に勝つことができたのは収穫だと思います」。レース後、工藤はそう振り返り、本調子ではなかったトラックシーズンで早めにトレーニング期間に切り替えたことが、好走につながったと明かした。「学生ハーフで3番を取った後は調子が悪かったので、強化に充てる時間を増やしたんです。その流れで夏合宿に入れたので、1日にかける陸上の時間が単純に増えた。その成果が出始めているのかなと思います」