南米原産「スーパーフード」を特産品に 北海道剣淵町、栄養価高いキヌア生産
北海道剣淵町の農家らが、南米原産の穀物キヌアを特産品にしようと取り組んでいる。栄養価が高く「スーパーフード」と注目される一方、国内でほぼ生産されていない点に着目。栽培に挑戦し7年がかりで販売にこぎ着けた。生産者らでつくる会社「けんぶちVIVAマルシェ」の高橋朋一(ともかず)代表(47)は「剣淵といえばキヌアとなるようにしたい」と目標を語る。(共同通信=星井智樹) キヌアは体内で合成できない必須アミノ酸やミネラルをバランス良く含み、健康に良い食品とされる。インターネットでは米と一緒に炊いたり、スープに入れて煮込んだりと調理方法が多数紹介されている。 農家でジャガイモなどを手がけていた高橋代表。「新しい作物で町を盛り上げたい」と模索していた2013年12月ごろ、町の姉妹都市があるペルーで生産されるキヌアを知り「すごい穀物だ」と驚いた。湿度の高い日本では不向きとされていたが「パイオニアになれる」と挑戦を決めた。
種を手に入れ2014年に栽培を始めたが、うまく発芽せず最初の壁にぶつかった。育て方のノウハウがなく、肥料の量や種を植える深さなど全てが手探り。町や仲間の農家も加わって試行錯誤を重ね2019年に収穫に成功した。 だが、子実は苦み成分「サポニン」が含まれ、そのまま出荷しても需要が見込めないことが判明。輸入品は洗浄処理されていて、高橋代表らも約2千万円を投じて調整作業のための「キヌアセンター」を建設し2021年3月、商品化を実現した。 イモなどの種苗の安定供給に取り組む「日本特産農作物種苗協会」のまとめによると、国内で他に生産が報告されたのは山梨県のみで、町は主要な産地とみられる。だが作物も町もあまり認知されていないのが実情だ。 そこで、菓子メーカーと共同で町産品を使ったチョコレートやロールケーキを発売するほか、自分たちでも小麦粉代わりになるパウダーや、葉を使ったお茶などの開発に取り組み、普及を図る。国内随一の産地として知名度を高め「子どもらに自分の町に誇りを持ってもらいたい」と話す。