尿漏れのレーザー治療を泌尿器科医が解説 尿失禁の手術費用・保険適用は?
尿漏れ(尿失禁)のレーザー治療は何をするの? 尿意がなくても尿漏れしてしまう原因は手術で解消できる?
編集部: 尿漏れはどうやって治療しますか? 皆川先生: 「腹圧性尿失禁」の場合はお薬や手術のほか、骨盤底筋を鍛えるエクササイズなどもありますが、やや習得しにくく、効果が出るまでには何ヶ月もかかります。 例えば当院では、レーザーによる尿失禁治療も行っています。「切迫性尿失禁」は、内服治療で症状の緩和が期待できますし、ボトックスの膀胱壁内注入療法も有効です。 編集部: 「腹圧性尿失禁」の治療についてもう少し詳しく教えてください。 皆川先生: まず薬物治療についてですが、現時点で腹圧性尿失禁の治療として保険適用のある薬は1種類だけで、選択肢はそれしかありません。過活動膀胱に対しての薬などを併用することもあります。 また、「一度薬を始めると一生飲まないといけない」「薬をやめるとまた漏れてしまう」といった悩みもつきものです。 編集部: では、手術療法は? 皆川先生: 薬で改善できない尿漏れに対しては、一般的に手術が適応になります。TOTやTVTと呼ばれる手術で、経腟的に切開を入れ、尿道をメッシュテープでつり上げて固定します。 効果的である一方、妊娠を希望される方には向かないことやメスを入れて切開すること、体内に異物が入ることに抵抗がある方も少なくありません。 実際に合併症として、感染症になったり、つり上げの調整がうまくいかず、術後、逆に尿が出にくくなったりするといった可能性もあります。 編集部: では、レーザー治療はどのようなものですか? 皆川先生: レーザーを照射することで、粘膜を引き締めたり、周りの組織の血流を改善し、コラーゲン組織の再生を促したりすることで尿漏れを改善します。 効果が高いだけでなく、麻酔や入院の必要がなく、異物も入らないため合併症がほぼ無いことが特徴です。また、過活動膀胱の症状改善も期待できます。
尿漏れ・尿失禁のレーザー治療は保険適用になる? 手術費用について教えて
編集部: レーザー治療について注意する点などはありますか? 皆川先生: 効果には個人差があるということと、治療効果は永続的ではなく1~2年と言われていますので、治療後も6ヶ月~1年に一回程度のメンテナンス治療をお勧めしています。また、尿漏れのレーザー治療には保険が適用されませんので、自費となります。 編集部: 費用はどのくらいかかりますか? 皆川先生: 当院の場合ですと、初回が11万円(税込)で、2回目以降が8万8千円(税込)となります。1回では効果が不十分なことも多いのですが、3~4回の治療で高い効果が報告されています。 編集部: レーザーの安全性についても教えてください。 皆川先生: 例えば当院で使用しているFotona社のレーザーは、欧州を中心に広く使用されており、安全性が高いことが証明されています。照射した組織が火傷することなく熱を伝えることができるため、ほとんどの患者さんが「痛みを感じない」と仰っています。 治療後、数日程度はおりものが増えたり僅かな出血を認めたりすることがありますが、それも徐々に改善します。もちろん、患者さんの状態によってレーザーの出力を調整し合併症を予防するよう努めています。 編集部: 最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあればお願いします。 皆川先生: 尿漏れで悩んでいる人は非常に多いと言われています。特に女性にとても多いのですが、泌尿器科に行くのは恥ずかしいからと、尿漏れパッドなどでやり過ごしている方も多いようです。しかし、一度受診していただけたら、いくつかの治療法をご提案することもできます。 以前は、「薬か手術か」と、やや両極端な2種類の選択肢しかありませんでしたが、現在はレーザー治療という新しい選択肢もありますので、ぜひ一度、お近くの泌尿器科に相談してみてください。