鈴木知事就任1カ月 リニアでスピード感/県政に経営感覚も/目立つ“安全運転”
鈴木康友知事は28日に知事就任から1カ月を迎えた。県政運営に「経営方針」を取り入れる考えを示し、特にリニア中央新幹線問題ではステークホルダー(利害関係者)と相次いで面会してスピード感を印象づけた。議会答弁や定例会見では随所に県議会への配慮をのぞかせる〝安全運転〟が続く。知事選で対立した自民会派幹部は「本格的な議論はこれから」としつつ「県政の正常化が期待できる」と川勝県政からの変化を前向きに捉える。 【表】鈴木知事就任1カ月の主な動き ■巧遅より拙速体現 5月29日の訓示で経営感覚を持った県政運営を打ち出し、職員に「巧遅よりも拙速」を求めた。その言葉を自ら体現したのがリニア対応だった。 着任1週間ほどで斉藤鉄夫国土交通相、丹羽俊介JR東海社長、長崎幸太郎山梨県知事と相次いで会い、建設促進期成同盟会で隣県知事や岸田文雄首相とも面会した。6月18日には山梨県側ボーリング工事についてJR、山梨県と3者合意を結んだ。対話姿勢を前面に出し課題解決への積極姿勢を示すことに成功した。 県幹部によると、面会はいずれも相手側からの要請だった。「即断即決で日程が決まった。政治家としての人脈のたまもの」と前知事との違いを指摘する。 ■県庁組織も変化 知事選で川勝県政の良い部分の継承を打ち出し、極端な変化は求めていないが、違いは徐々に表れている。前県政では結論が出ず長時間にわたった幹部職員との協議は10~15分程度に短縮された。幹部職員は「行政経験があり各種制度への理解が深い。その場で結論が出る」と、合理的な判断や決断の早さを証言する。職員とも打ち解けてきているという。 ■信頼構築へ道半ば 就任前日から県議会各会派にあいさつ回りして信頼関係の構築に乗り出した。県議会6月定例会での論戦では、知事選で主張した県東部への医大誘致を軌道修正したほか、さまざまな意見がある浜松市の新野球場整備でも、協議会を設置して全体構想を検討すると述べるなど「柔軟な姿勢を見せた」(自民幹部)。 今後は前倒しを表明した次期総合計画や2025年度予算編成にどれだけ自身のカラーを出せるかが焦点。自民幹部は「前知事の下で崩れていた国や市町との関係の再構築に動き出した」と評価する一方で「次期総合計画の内容がどうなるかは未知数」と述べ、特に行財政改革の打ち出し方に対して身構える。
静岡新聞社