拘置所で3度の自殺未遂…“奇行を止めない殺人犯の女(31)”を裁判所が「詐病」と看破できたワケ(2007年の事件)
殺害の理由
事件当日、例によって孝一さんの女性関係をめぐって口論になった祥子は、「お前とはもう、体の関係だけでいい」と突き放された。さらに「これ以上太ったら、浮気するぞ」と言われ、不安になった。 その夜、孝一さんと添い寝しながら寝顔を見ていて、祥子は「こんな苦しみを味わうぐらいなら、ここでハッピーエンドを迎えた方がいい」と突然思い立ち、いきなり包丁を孝一さんの腹に突き立てたのだ。内臓が見えると、興奮してさらに何度も刺したという。 孝一さんは「祥子…」と言い残して絶命。それを見て、「最後まで私のことを考えていてくれたんだ」と思うと、うっとりした気持ちになった。祥子は“あの世で幸せに暮らす儀式”を施し、自分も自殺しようとしたが、死に切れなかったので、2日後には自首することにしたというのである。 「すると、あなたは殺意を持って、被害者の腹部に包丁を突き立てたんだな」 「はい、2人とも病気だったので、あの世で一緒になることが幸せだと思いました。殺してあげるのが一番いいと思いました」
こうして祥子は殺人罪で起訴された。ところが、祥子は公判が始まると、「彼に『殺してくれ』と頼まれたから刺した。調書はデッチ上げられた」と主張。弁護士も打ち合わせになく、「公判を延期してほしい」と申請した。
拘置所の中で3度も自殺未遂
その後、祥子の奇行はますますひどくなり、「孝ちゃんの霊が来た」と言って拘置所の壁に延々と話しかけたり、「欲求不満で我慢できない」と言って差し入れられた本の角を使って延々と自慰行為をしたり、「私の病気は治る見込みがない」と言って3度も自殺未遂を図るなどした。祥子は再び、精神鑑定にかけられることになった。 しかし、これで事件の真相が暴かれることになった。専門医による鑑定で、祥子は精神病ではなく、「罪を軽減したいがための詐病」と断定されたのだ。 「被告人が主張する社会恐怖は、国際基準による妄想の定義には当てはまらない。性的パートナーの性的貞節を正当な理由なく疑うという妄想性パーソナリティ障害にも当てはまらない。被害者が被告人の名前を叫んで絶命し、被告人のことを考えてくれていると思い、うっとりした舞い上がる気分から、被害者との絆を保持したいと考え、自殺を企図した。被告人は情緒不安定性パーソナリティ障害であったと認められる。つまり、犯行においては人格が影響しており、精神面は影響していない」 つまり、祥子の話はすべて作り話だったということだ。1年ぶりに開かれた公判で、祥子は初めて遺族に謝罪した。精神疾患を装っていたことについては、「父や妹に肩身の狭い思いをさせたくなかった。心中と言えば、心理的負担が軽くなるかと思い、ウソをついていました」と述べた。ホラー関連の話はすべて後から考えたという。
裁判所が言い渡した刑罰は…
「生まれ変わっても、もう一度孝一さんと結婚したい。今まで付き合った人の中で、自分の病気をこれほど心配してくれた人はいませんでした。お互いに寂しがり屋だったので、一緒にいるだけで幸せでした。とにかく私が一番愛した人でした」 裁判所は懲役11年を言い渡した。自分を弱者に見せかけるのも、したたかなサイコパスの特徴かもしれない。
諸岡 宏樹/Webオリジナル(外部転載)
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