好調な日本株、上昇はそろそろ一服の兆し その根拠とは?
企業景況感を示すグローバル製造業PMIは2017年12月に54.5へと上昇し、2011年2月以来の高水準に到達しました。50が好・不況の分岐点の目安となるこの指標は世界的に景気が減速した2016年初に50近傍まで低下しましたが、2016年央から顕著に持ち直しています。
グローバル製造業PMIとの連動性から探る、今後の株価の行方とは?
内訳は、先進国の製造業PMIが56.3へと0.5pt上昇し2011年2月以来の水準、新興国のそれも52.2へと0.5ポイント改善して2013年1月以来の高水準となりました。新興国は2013年以降、米連邦準備制度(FRB)の引き締め(観測)を主背景に厳しい資本流出圧力に直面してきましたが、米長期金利の低位安定という追い風が吹く中で耐性を強め、それを克服した格好となります。実体経済は明確に好転し、製造業PMIは中国(51.5)、インド(54.7)、ロシア(52.0)、メキシコ(51.7)、ブラジル(52.4)、トルコ(54.9)と50を超える国が続出。南アフリカ(48.4)、インドネシア(49.3)が50以下に留まっているものの、全体としてみれば状況は明らかに改善しています。 グローバル製造業PMIは世界株と強い連動性を有しています。最近の世界株は、米国株を筆頭にバブルを意識させる水準にあるとはいえ、PMIとの比較では企業景況感見合いの上昇と捉えることができ、違和感はありません。PMIが株高によって押し上げられている可能性は排除できませんが、両者の連動性が崩れていないことは、株価が行き過ぎていないという点において、一定の意味があるでしょう。
PMIから短期的な株価のトレンドを占うと、先行きの株価上昇余地は大きいとは言えません。PMIと株価の連動性が崩れないと仮定した場合、目下のPMIはすでに調査開始以来の最高付近に位置しており、“これ以上”が期待しにくい水準にあります。PMIのように「前月との比較」を問うサーベイ指標が無限に回復することはなく、必ずどこかの水準で頭打ちになるからです(PMIは前月との比較で景況感をヒアリングしている)。従って、世界的に株価は上昇モメンタムが鈍化する可能性が高いといえ、年初に快調な滑り出しを遂げた日本株もそろそろ上昇が一服する局面に差し掛かっている印象です。
(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一) ※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。