「あとで聞いたら…」なでしこジャパン、浜野まいかを五輪に導いた“恩師”の助言。「鳥肌が立つ」準々決勝で再会へ【パリ五輪】
●挫折から這い上がり世界最高峰のリーグを制覇
浜野が昨季最も注目されたのは、今年5月16日に行われたWSL第18節のトッテナム・ホットスパーFCウィメン戦だ。UWCLを戦っていたことで日程が調整されたため、最終節の第22節前に行われた大事な一戦だった。 5連覇を狙うチェルシーは、この時点で最終節のみを残していた首位マンチェスター・シティWFCとの勝ち点差が3となっており、2位に位置していた。この試合を落としてしまうと、優勝が危ういという状況だった。 シーズン終盤で疲労も見えていたチェルシーを救ったのは浜野だった。トッテナム戦にスタメン起用された同選手は36分、グーロ・レイテンが左サイドを抜け出し、グラウンダーのクロスを供給。走り込んできた浜野がファーサイドからダイレクトで合わせた。31日のナイジェリア女子代表戦でのゴールと似たものだった。 結局、浜野のゴールが決勝点となり、チェルシーはシティと勝ち点で並んだ。そして、最終節はマンチェスター・ユナイテッドWFCに6-0で快勝し、見事5連覇を飾ったのであった。 浜野のあのゴールがなければ、チェルシーは優勝できなかったかもしれない。これを考えれば、昨季の優勝に貢献したと言っても過言ではないだろう。 怪我という挫折から這い上がり、世界最高峰のリーグで優勝を経験した浜野はパリ五輪のメンバーに選出された。浜野がパリ五輪への切符を手にすることができた要因の1つに、現在アメリカ女子代表を率いる名将エマ・ヘイズ監督とのチェルシーでの出会いがある。
●浜野まいかを五輪に導いた恩師の言葉
浜野はナイジェリア女子代表戦前に「今季からイングランドでプレーすることになって、エマ・ヘイズ監督は今まで出会ったことのなかった監督というか、もう一度監督のもとでプレーできるなら一緒にしたい」と語った。また、ヘイズ監督について浜野は「全てを分かっている気がする」と表現した。 その真意について「戦術面というか、あの試合で勝たなければ優勝はないってなってる時に、今までずっとスタメンとかじゃなくて、急に練習試合でサイドバックとかやらされて」とFWではなくDFで起用されていたことを明かした。それでもヘイズ監督を信じて、自分のできることをやってきた浜野は次のように話している。 「あそこのポジションで出してもらえて、あとで聞いたら、やっぱりチェルシーというところでプレーするなら、五輪の18人に選ばれるなら、FWだけやっているところを監督にアピールしても、あなたは18人っていう狭い枠で、いろんなポジションをできていた方が、選ばれる確率が上がる。本当に全部考えて、右サイドのポジションとか、サイドバックも練習させてもらえました」 この大舞台に這い上がることができたのは恩師・ヘイズ監督の助言があったからだ。ナイジェリア女子代表戦では五輪初ゴールを記録して日本のグループリーグ突破に貢献。そして、パリ五輪準々決勝の相手は、ヘイズ監督率いるアメリカ女子代表だ。 昨季のWSL戦終了後にアメリカ女子代表の指揮官に就任したヘイズ監督は、短い時間でチームを作り上げてきた。エースだったアレックス・モーガンを選外にするなど、様々な意見が飛ぶ中、パリ五輪のグループリーグでは3戦全勝で準々決勝まで勝ち上がった強敵だ。 浜野はヘイズ監督との再会について「本当に今考えるだけで鳥肌が立つというか、まず楽しみ。まず会えることが楽しみですね。絶対に勝ちたいし、本当にエマは日本にも何回も来ているし、日本が大好きでリスペクトもしてくれて、でも試合になったら勝たないといけない」と話す。恩師が率いるアメリカ女子代表を破り、浜野は恩返しをすることができるだろうか。 (文:折原亘、取材協力:加藤健一【フランス】)
フットボールチャンネル