浅井健一が求め続ける“化学反応”の正体 ソロ最新作に込めた今のモードを語る
制作におけるソロとSHERBETS、AJICOとの違い
──アルバムの話に戻りますが、「Calm Lula」と次のインストの「あおるなよ」ですが、 “Come on Calm Lula”という一言が出てきますね。 うん、まあ言うことがなかったんで“Calm Lula”って言いました。“Calm Lula”っておまじないで、なんかいいことが舞い込んでくるっていうおまじない。 ──なるほど。「あおるなよ」と思いつつ、いいことが起こるといいなって言う独り言みたいな? まあそうだね、そうやって捉えてもらったらちょうどいいかな。 ──そしてアイスクリーム屋さんの話が出てくる「POPCORN」これはインスタにアップしていたお店なんですか。 そうだよ。 ──日常の中で見た光景や色彩が印象に残ったんですね。 なんかあんまり考えずに歌詞考えて書いてるんで、まあその時自分の周りで巻き起こってることだとか自分のそのとき感じた思いがまぜこぜになってる歌だね。全部そうだけどさ(笑)。 ──言いたいことがある感じの詞と情景的な詞が混ざってるでも感じはしました。でも総じて全体的に楽しいんですよ。 うん、楽しい。歌詞が普通じゃないからね。 ──普通じゃないことを自分も見に行こうというか、出ていこうという気持ちになれて、それは去年から今年にかけての気分にフィットしてるところがあります。 うん。それはちょうどよかった。 ──ラストの「けっして」だけは仲田(憲一)さんと椎野(恭一)さんで。この2人でやりたいと思った理由はありますか。 振り返る曲だもんだから、剛史も瞳ちゃんも振り返るには若いんで。だからやっぱりちゃんと振り返れる人にお願いしたっていう。 ──前だけを見て進むことはできないという内容で。 人間振り向かないことなんかできないんだけど、結局最終的には振り向いてばかりいてもしゃあないのでもう前向いていくしかないんだよっていう。生きるしかないんだ、みたいなさ、そういう感じかな。 ──全体的なことなんですが、今作のポップさは曲調ももちろん、サウンド面もすごくきらびやかな印象があって。抽象的な質問になっちゃうんですが、浅井さんの頭の中で鳴ってる音を作品に落とし込む解像度というか、そういう精度が高まっている実感ってありますか? 難しいこと言うねえ。なんだって?(笑) ──頭の中に鳴ってる音がきっと曲を作る時にあるわけじゃないですか。その再現度がキャリアを重ねていく中で高まっている実感はあるのかなって。 それはうまくいく時と全然自分の思い描いているようにならないというのは昔からあるよ。自分の設計図があって、それをみんなに言ってやってもらう。でもそれだけじゃあんまり反応しあってないじゃん、その人間と。で、やってる最中に相手がちょっと勝手なことをやったりして「あ、それいいね」とかそういうところの反応なんだよね。弾いた違うフレーズがなんかカッコよかったりすると、「あ、今弾いたのそれもう一回弾いて」とか言って、それを見落とさないっていうのが大事。見落とすともう永遠になくなっちゃうんで。だから常にカッコいい音が鳴ったらすぐ反応してるかな。 ──SHERBETSやAJICOはバンドだから、制作でもメンバー同士の化学反応がある前提じゃないですか。 それはSHERBETSが一番でかいんだわ。化学反応がすごく起き合うんだよね、4人の中で。今のそのドラムがいいとかさ、そのベースとか。それでどんどん成り立っていくんだけど。今回のこの3人もそれで成り立ってったんだけどね。AJICOの時は一番それはないね。 ──え、そうなんですか? プロデューサーとかつけちゃうとそのプロデューサーのものの感じになるから、俺それちょっと嫌なんだけど、この間のAJICOはそういう感じだったね。でも結果的には成功したと思う。 ──ソロだとやっぱり浅井さんが大ボスというか、浅井さんの中で鳴ってる音を再現するわけですよね。 でもソロでも俺は化学反応を期待してる。一人で全部打ち込みで作るわけじゃないんで。今回瞳ちゃんと剛史がおるもんだで、期待したしそれは起きたよね。でもSHERBETSほどではない。 ──それで言うとSHERBETSとAJICOのメンバーで瞳さんと宇野君ほど激真面目って方はいないんですか? AJICOは激真面目だよ、UA以外は(笑)。冗談です。SHERBETSは激真面目じゃないように見えて激真面目ですよ。全員センスがいいし世代が近いから、好みも似てるんだよね。それにSHERBETSのみんなはものすごいテクニックを持ってるわけじゃないんだけど、メロディメーカーではあるんだよね。 ──すごく納得感があります。 外村(公敏)君もすごい超テクニシャンではないんだろうけど、でも叩く内容が俺と世代が同じだから、「こういう曲のときはやっぱこのリズムだよね」っていうのが俺と合うんだよね。仲田(憲一)先輩もベースのメロディカッコいいじゃん。だから演奏がガチっと固まると、とんでもないところまで行けるんだけどね。それが常にそこまで行ければ最高なんだけどね、だからバンドらしいといえばバンドらしいんだわ。で、瞳ちゃんはメロディメーカーだわ。でもちょっと世代が違うんで、テクニシャンでリズムも正確なんだけど、外村くんみたいに俺が思う「こういうドラム」っていうのとはちょっとずれてたりするよね。だから俺が説明しなくちゃいけないとかそういうのはたまにある。