誰にでもできる!? NHK「所さん!大変ですよ」のネタ探しノウハウの真髄
所ジョージさんがMCを務めるNHKの「所さん!大変ですよ」は、大きくは注目されなかったけれど、簡単には見過ごせない“事件”を徹底した取材で追跡する情報バラエティ番組だ。「なぜ自宅から? 相次ぐ謎の“拳銃”押収事件」「謎の“高齢者”公園」などとタイトルだけでも、「なんだそれは?」と見てみたくなるラインアップがそろう。ネタの後追いをするメディアもあり、業界が注目する“ネタ元番組”という噂もちらほら。しかし、どうやってネタを探しているのだろう? 東京・渋谷のNHKにお邪魔した。
小さいけれど見過ごせない“事件”を探す
今年4月に始まった番組のコンセプトは、社会の片隅で起きている小さいけれど見過ごせない“事件”の意外な真相をあぶり出すこと。「ふ~ん」だけで終わってしまうようなネタはボツ。限られた人の間だけで知られている話だけれど、全国的に共通性・普遍性があり、調べてみたら社会的な意味付けがあったというようなネタでなければならない。深刻になりがちな内容でも、所ジョージさんが、独特のトークで見やすいように助けてくれる。 ネットには、今どんなキーワードが検索されているかとか、どんなキーワードがソーシャルで飛び交っているかという情報は、ひと目で分かるようなサービスがある。これらを使った方が、効率的だし、世間の関心も拾いやすい。ネットメディアのネタ探しの主流はこれだ。しかし、NHKともなるとそんなお手軽なネタ探しが許されるはずがない。ビッグデータを解析しているのか? ソーシャルの動きを特別に追っているのか? ぜひノウハウが知りたい。
アナログでネタを探すってどういうこと?
「すごい能力ですよね。一体、どんな工夫をしてネタを見つけてるんですか?」と水を向けると、制作局のエグゼクティブプロデューサー伯野卓彦さん(48)が「すみません、僕らアナログなんですよ」と申し訳なさそうに口を開いた。 伯野さんは、かつて「クローズアップ現代」の制作も担当していた“社会派”。外見は作家のような硬い人物に見えるけれど、話し方は至ってフレンドリー。伯野さんは「ネットでネタを追いかけると新鮮さや速さが求められ、結局、他社と同じ内容になりかねない。この番組は“モノの見方”が勝負。アナログ人間にとっての最後のプライドといってもいいかもしれません」。チーフ・プロデューサーの杉浦大悟さん(42)も「みんなが知っていることを出しても面白くないと思う」と同意する。そういうことなので、インターネットでネタ探しはしないのだという。 じゃあ、アナログでネタを探すってどういうことなのか? 例を聞いてみた。2015年4月2日の放送第一回は「なぜ自宅から? 相次ぐ謎の“拳銃”押収事件」というタイトル。これは、新聞の折り込みチラシの中に「遺品拳銃発見のお願い」という警視庁のお知らせが入っているのを、伯野さんの息子が見つけたのがきっかけ。杉浦さんが、福島県警に問い合わせてみると、数多くの拳銃が発見されていたことが判明。「きっと全国でも同じことがあるはず」と取材して深掘りすることに。 「謎の“高齢者”公園」の回は、番組スタッフの子どもが公園の器具で遊んでいて怪我をしたという出来事から、高齢者向けの遊具があるということを知った。家族はこの遊具の存在を知っていたというが、大阪の早朝の公園に取材に行くと、器具を激しく使いこなす、誰も知らない90歳の「スーパーおじいちゃん」の姿を目にすることになる……。