「え、たった半年?」『名探偵コナン』や『機動戦士ガンダム』作中で過ぎた時間は短かった
■1人の少年が“勇者”になるまでの経過時間とは…『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』
1989年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』(監修:堀井雄二氏、原作:三条陸氏、作画:稲田浩司氏)は、国民的人気RPG作品である『ドラゴンクエスト』シリーズのエッセンスを受け継いだファンタジー漫画だ。 今年で連載開始から35周年を迎えた本作も、実は連載終了時までの作中の経過時間が短いことで有名だ。 孤島デルムリン島で暮らしていた主人公・ダイが“勇者”として、宿敵である大魔王バーンを倒すまでの旅路が描かれた本作。 このダイの旅路がどのような日程だったのかがオフィシャルファンブックで詳しく語られているのだが、ダイが島を旅立ってから大魔王を撃破するまでの日数は、なんと“86日”。つまり、約3カ月ほどしか経過していないことになる。 7年間にわたって連載され、全37巻もの単行本が発行されている本作だが、1人の少年が使命に目覚めてから、数々の仲間と出会い、“勇者”として成長していくドラマがそれだけの時間内で繰り広げられていたと思うと、かなり濃密な3カ月だったといえるだろう。 また、それとともに、大魔王の野望がこれだけのわずかな時間で潰えてしまった事実にもどこか物悲しさを抱いてしまう。
■数カ月に詰め込まれたドラマの濃厚さに脱帽…『機動戦士ガンダム』
作中の独特の“時間軸”に驚かされてしまうのは、漫画作品に限った話ではない。アニメにも、短い期間で実に重厚なドラマが展開された作品が数多く登場している。 国民的人気を誇るロボットアニメ『機動戦士ガンダム』も、そんな作品の一つだ。 1979年4月から、翌年1月まで計43話のエピソードが放送された本作は、主人公のアムロ・レイやシャア・アズナブルをはじめとした魅力的なキャラクターや、登場するメカの格好良さと手に汗握る攻防、戦争のなかで繰り広げられる人々の葛藤や衝突、成長劇……などなど、数多くの要素が視聴者を惹きつけ、時代を超えて凄まじい人気を誇っている。 本作は宇宙世紀0079年に勃発した“一年戦争”の終結までが描かれているのだが、アムロらが参戦したのはこのかなり終盤でのことだった。 アニメ冒頭、アムロが住む“サイド7”が急襲されたのが“9月18日”、そして、最終決戦である“ア・バオア・クー”での戦いは“12月31日”に発生している。これらを加味すると、本作は全体を通して約4カ月ほどの期間のエピソードを描いていたことになるのだ。 手に汗握る激闘の数々や戦場で奮戦するキャラクターたちの活躍に魅了されるがあまり、ここまで短期間の出来事だったことに気付かなかった視聴者も少なくはないかもしれない。 作品の連載・放送期間の長さからつい錯覚してしまいがちだが、全体を通してみると実は短期間の物語だった……という奇妙なギャップにあらためて驚かされた次第だ。 作中のエピソードやドラマを楽しむ一方、こういった“時間軸”にも着目することで、新たな視点で物語の魅力を発見できるかもしれない。
創也慎介