相続した土地や建物 名義変更を怠ると過料? 不動産登記法改正で義務化
土地や建物など不動産の相続登記が4月から義務化される。不動産登記法などの改正で正当な理由なく手続きを怠ると、過料を科されるようになる。人が亡くなると必ず相続が発生するため、相続人は今後どんなことに気を付ければ良いのだろうか。相続制度に詳しい札幌弁護士会の諸星渓太弁護士に法改正の狙いやポイント、対処法などを聞きました。(くらし報道部デジタル委員 升田一憲)
■売れないから…亡くなった所有者の土地は相当数 ―相続登記とは一体、どういうものなのですか。 最初に登記について簡単に説明しておきましょう。登記は土地の場所や広さ、建物の構造など不動産の状態と、その権利関係を記したものです。現在の所有者がだれで、抵当権が付いているかどうかなどをだれでも確認することができ、不動産取引を安全に行うための制度です。そして、相続登記は、家や土地など不動産の所有者が亡くなった後、不動産の所有名義を相続人に変更する手続きのことをいいます。 ―義務化ということなら、現在、相続登記は一体、どのくらい行われているものなのですか。 政府の調査によれば、だれのものか分からない土地の面積を合計すると、九州よりも広くなるとのことですので、登記されていない土地は相当な数に上ると思われます。土地の売買の時は必ず登記されますが、登記には当然、手間も費用も掛かります。そうすると、売ることもできない土地は登記をする動機付けがなく、そのままにされている例も多いと思われます。 ―相続登記をしないと、どんな支障が生じるのですか。 再開発などの公共事業を行う場合には、工事に必要な土地を確保するため、所有者から購入する必要がありますが、所有者が分からないままだと用地買収が難航し事業が進まないことが以前から指摘されていました。また、13年前の東日本大震災の際にも復興事業の妨げになっているというニュースを耳にしました。相続が何度も生じて利害関係人が増えれば、特定までに時間を要してしまいますし、利害関係人の中に行方が分からない人が含まれるリスクも増えてしまいます。相続登記がされないまま放置されればされるほど問題が大きくなってしまうのです。