パリオリンピック 加納虹輝が出場するフェンシング男子エペ団体、女子フルーレ団体を東京五輪金メダリストが展望
3番手の山田選手は、相手の動きを読み、剣をしならせて腕を狙うプレーを得意としています。東京五輪では若手でしたが、この3年間でチームのいい雰囲気を作るポジションを確立し、勢いをもたらしてきました。プレーだけでなく、他メンバーを鼓舞する存在としても注目です。 見延選手と山田選手の個人戦は、いずれも銀メダルを獲得したヤニック・ボレル(フランス)選手に敗れる悔しい結果となりました。団体戦での巻き返しに期待したいです。 そして交代選手である4人目は、引退した私と入れ替わる形になった古俣選手。五輪メンバーが発表された際、東京五輪の交代選手だった私は古俣選手に励ましのメッセージを送りました。 五輪は初出場ですが、加納選手のライバルとしてジュニア時代から切磋琢磨してきた選手で、2022年のアジア大会、2023年のアジア選手権では決勝で加納選手と対戦するなど優勝を争ってきました。その2試合はいずれも加納選手が勝利しましたが、確かな実力を示してきた選手です。 フェンシングの団体は3人による戦いで試合が進みますが、古俣選手のような交代選手が出場するタイミングは、「相手にリードを許すなど苦しい状況で、試合の流れを劇的に変えたい時」です。その力が必要な場面は必ず訪れるでしょうし、チームの起爆剤として苦況を打破してくれる姿を楽しみにしています。 個人戦で感じたそれぞれの手応え、悔しさを、どのように団体戦の推進力につなげていくのか。選手たちが抱える思いにも注目しながら、現地パリで声援を送りたいと思います。 【Profile】宇山賢(うやま•さとる) 1991年12月10日生まれ、香川県出身。元フェンシング選手。2021年の東京五輪に出場し、男子エペ団体において日本フェンシング史上初の金メダルを獲得。同年10月に現役を引退。2022年4月に株式会社Es.relierを設立。また、筑波大学大学院の人間総合科学学術院人間総合科学研究群 スポーツウエルネス学学位プログラム(博士前期課程)に在学中。スマートフェンシング協会理事。スポーツキャリアサポートコンソーシアム•アスリートキャリアコーディネーター認定者。
宇山賢●文 text by Uyama Satoru