新1万円札の肖像「渋沢栄一」、全盲の学者「塙保己一」…あと1人は? 交代の陰に男女共生 「埼玉三偉人」のなぞ 鎌倉時代の武将「畠山重忠」から日本最初の女性医師「荻野吟子」へ
◇ 「埼玉は東京に近すぎて特色を出すのが難しいが、『こんな立派な人たちがいた』と言うと特色が分かりやすい」。県が三偉人のアピールを始めた頃に知事を務めていた上田清司参院議員は振り返る。取り上げる偉人は1人よりも複数。しかも覚えやすい3人がいい。この時、埼玉新聞社が選んだ「三偉人」のことは知らなかったという。 医師開業試験が男性しか認められていなかった時代に、困難を乗り越えて日本初の公認の女性医師となった荻野吟子。「男女共同参画の草分けともいえる人物。扉を開いた人が一番偉い」と上田氏は話す。県では2000年に男女共同参画推進条例が制定され、女性政策が積極的に進められていった。男女共生の社会が進むにつれ、荻野吟子が三偉人に定着するのは自然な流れだった。 ■女性の社会参加、制度理解が課題 女性活躍の先駆者、荻野吟子を生んだ埼玉県だが、現状はどうだろうか。2024年6月に内閣府男女共同参画局を作成した「全国女性の参画マップ」を見てみる。
政治参画では、都道府県議会における女性議員の比率が埼玉は16・1%で全国14位(県議93人中で女性議員15人)。市区議会議員では女性の割合が26・9%で同2位、町村議会議員では20%で同4位と、まずまずの数字だ。 しかし、管理的職業従事者(会社役員、管理的公務員)に占める女性の割合では、埼玉県は13・5%で、全都道府県の中で43位と下位に甘んじている。ただ、1位の徳島県ですら19・6%に過ぎず、日本の職場内での女性の地位向上は課題があるといえそうだ。 また、県人権・男女共同参画課の「統計でみる埼玉の男女共同参画」によると、男性の家事・介護・看護・育児時間は、21年には埼玉は全国1位に。ただ、1日当たりで38分(全国平均は33分)という数字は、残念ながら高いとはいえない。 同課共生推進幹の鵜沢浩美さんは「(男女共同参画の)制度は整っているが、現状はそれを使い切れていない」と話す。制度の周知を図るとともに、「荻野吟子賞」などを通じて意識啓発を図っていくという。