町家でレコード楽しめる針メーカー直営店 「Feel Records 京都はなれ店」
レコードの音に包まれながら、古い町家で食事やアートも楽しめる―。リスニングルームもあり、アナログの音を気軽に楽しめる京都市下京区の「Feel Records 京都はなれ店」は、レコード針の製造を手がける日本精機宝石工業(兵庫県新温泉町)の直営店だ。(共同通信=井上康太郎) 格子戸を開け足を踏み入れると、そこは店の限定商品や中古盤などが並ぶ販売スペース。売れ筋のレコード針を約100種類収めたたんすが存在感を放ちつつ、和の空間になじんでいる。奥のカフェでは、お薦めの「だし巻きバーガー」やコーヒーを味わえる。 急な階段を上がった2階には、スピーカーの後ろの壁に、音を反射する杉板を張ったこだわりのリスニングルーム「音の間」がある。1時間につき1人1500円、3人まで一緒に利用でき、店のレコードを聴けるほか持ち込みもできる。 日本精機宝石工業は2023年10月、職人の手仕事を間近に見られる工場見学などを体験できる「Feel Records」(有料、要予約)をスタート。レコード針の販売数の約9割は海外(2023年度)のため、店ではインバウンド(訪日客)の需要を期待。大阪・関西万博で京都に立ち寄る人が増えるとみて、開幕1年前の2024年4月にオープンした。
2階にはギャラリーもあり、レコードや音楽に関する美術作品を展示。京都らしく、華道教室やお茶会に使いたいとの依頼もあるが、利用は「レコードで音楽を流すこと」を条件とした。若者がDJに挑戦できるイベントも企画し、レコードを軸にした文化を広げようとしている。 音楽との出合いは、今や定額制のサブスクリプション(サブスク)が主役。同社代表取締役で店の支配人を務める仲川和志さん(60)は、その便利さ、手軽さをコンビニや自販機のコーヒーに例える一方で「レコードは家で豆をひき、ペーパードリップで味わうようなもの。両方必要でしょう」と言う。「疲れた時はレコードの温かみのある音を味わってほしい」 日本精機宝石工業 1873(明治6)年、縫い針製造で創業。1966年にレコード針の生産を始めた。CDの登場で需要が落ち込んだが、交換用の針を検索できるデータベースを作り、2006年ごろからネット注文が増え始めた。約2350種類を受注生産し、これまで100カ国以上に輸出。2023年度の針の売り上げは、2015年度に比べ約4割増となっている。