落合GMのコストカットは21世紀型球団経営なのか?
■勝てば勝つだけ球団経営を圧迫する? 広瀬氏は、数年前に某球団の経営をコンサルティングしていたが、チームが勝ち始めると、財布を握るフロントは逆に青冷めていたという。「勝てば、その分年俸をアップしなければならないが、それに見合う経営収入が増えない」というのが理由だった。 球団経営を圧迫している最大の要因は選手年俸の問題だ。そのアップ率に比例して観客動員や放映権料、マーチャンダイズも含めた球団の収益がアップすれば問題はないだろうが、そのバランスが悪いのが実情である。つまり人件費の増加に収益増加が追いつかず、チーム成績が悪くなったときに、これまで上げてきた分が重荷になる。 そのリスクを回避するには、“下げる時には下げる”という荒っぽい人件費の調整が手っ取り早い。しかし、契約更改で、選手と査定担当者が面と向かえば、「来季こそ頑張って欲しい」「怪我をしたからしょうがない」というような温情が間に入ってきて、なかなか大胆なカットは難しい。選手の一部は代理人を使っているから、なおさら下げ幅は限られてくる。確かに広瀬氏の言うように元監督で現場と選手を熟知している落合GMが、選手以上のパワーを持っているからこそできた日本的温情を排除した革命的なコストカットだったかもしれない。 ■低評価に引退を考えていたという山本昌 だが、この一方的な経営サイド視点に立ってのコストカットに問題はないのだろうか。例え野球協約に準じた下げ幅であっても、これが企業で行われば、ユニオンが出てきて大騒動になる案件であることは間違いない。 「(問題が)あるとすれば、選手のモチベーションですね。そこを含めて来季の中日の結果に私は注目しています」とは、広瀬氏。 実は、今季16試合に先発、5勝2敗の成績に終わった山本昌は、下交渉の段階では6000万円から50%ダウンの3000万円を提示されていた。金額云々ではなく、あまりにも低い評価に山本昌は、周辺関係者に「もう引退した方がいいかも」と漏らしていたという。結局、本交渉では、落合GMが出てきて1000万円をアップした4000万円の提示と「50歳までプレー」の実質2年の複数年を“口約束”して山本昌を納得させたようだが、一度は、やる気を失せさせ、ここまでの恐怖政治を敷いたことは、山本昌に限らず、どこかでチームの歪になって跳ね返ってくると思う。