梅吉(柳葉敏郎)・スズ子(趣里)が涙の「父ちゃんブギ」絶唱…出生の秘密を語る父娘の会話の裏側を訊いた
スズ子が秘密を知っていることを、梅吉は把握していたのか?
ところで110話に、第10週「大空の弟」のワンシーンが「スズ子の回想」として登場する。48話で、六郎(黒崎煌代)の戦死公報を受けて、「香川に帰って一からやり直す」と言い出した梅吉に、スズ子が「ほんまの娘やないからか?」と小さな声でつぶやき、梅吉が「何て?」と返した。 あのとき、スズ子の言葉が梅吉には聞こえていたのだろうか。また、スズ子が出生の秘密を知っていることを、梅吉は把握していたのだろうか。 これについて福岡さんに質問してみると、「そこは、見ていただく方に委ねたいと思っています。柳葉さんの『何て?』が(聞こえたうえでの、なのか、本当に聞こえずに聞きかえしたのか)どちらにも解釈できて、絶妙だったと思います。僕個人としては、あのときのスズ子の言葉が梅吉には聞こえていたと思っているのですが。もちろんどちらの解釈もありで、『スズ子が出生の秘密を知っていたこと』を梅吉が把握していたか否かも、見ていただく方の好きなようにとっていただければ、と思っています」と説明した。 ■ 撮影は15分以上にも及んだ、梅吉役の柳葉敏郎最後のシーン さらに110話、病床での「梅吉とスズ子の別れ」のシーンが柳葉敏郎にとってのオールアップだったといい、この撮影について福岡さんは振りかえる。 「重要なシーンであり、梅吉最後のシーンだったので、柳葉さんはとても集中していらっしゃいました。リハーサルをおこなわず、そのまま本番ワンテイクで撮るので撮影部も気合が入っていました。撮影したところ15分以上あったのですが、編集して、それでもおよそ10分と、とても長いシーン。カットがかかったあと、柳葉さんはそこでオールアップでしたので、とても晴々とした表情をされていましたね。趣里さんは感極まって泣いていらっしゃいました」。 映画人になりたいと故郷・香川を飛び出て、最愛の妻・ツヤと駆け落ちし、流れ流れて大阪は福島の銭湯に。スズ子と六郎を愛情たっぷりに育て、戦争で六郎を失い、香川に帰京し、最後は地元の人々に愛される写真館を営んだ梅吉。その長い旅路が終わった。これからは、天国からスズ子と愛子を見守ってくれることだろう。 取材・文/佐野華英