集中力が続かない→行動経済学で解決可能!…仕事・勉強の「生産性を高める」簡単な方法
薬に頼る必要などない…生産性を向上させる“意外な”方法
健康面、法律面で問題の多いスマートドラッグを使わずに集中力を高める方法があれば、多くの人に役立つことでしょう。そんな役割が期待できる、行動経済学の法則があります。それが「締め切り効果」です。 人は締め切り日時が明確に与えられると、間に合うよう頑張るものです。意識しなくとも、作業に集中します。「時間に余裕のない状態」が集中力を向上させるのです。皆さんも、1ヵ月先が締め切りの仕事や勉強より、1時間後が締め切りのほうが、集中力を発揮できたという経験があることでしょう。これは締め切り効果によるものです。同様の効果を「集中ボーナス」とも呼びます。 デューク大学のダン・アリエリーらは、この法則を証明する実験を行っています。 その方法としてまず、対象者の大学生に3週間で10ページのレポートを3本校正する仕事を与えます。修正できた本数ごとに報酬を渡します。対象者を以下の3グループに分けて結果を比較しました。 (1)3週間後に3本まとめて提出する「ぎりぎりグループ」 (2)1週間に1本提出する「毎週締め切りグループ」 (3)自分で締め切りを設定する「お任せグループ」 実験の結果、「毎週締め切りグループ」が一番時間をかけて(84分、ほとんどのミスを見つけました。「ぎりぎりグループ」は一番短く(51分、見つけたミスは最も少なかったです。「お任せグループ」はその中間という結果になりました。この結果からわかるのは、お任せやゆるい締め切りの設定ではなく、厳しい締め切りを課すことで生産性が高まるということです。そこでは集中力が発揮されているのでしょう。 さらに、課題を細かく分割して短期間の締め切りを複数定めるなど、方法をアレンジすることで、より効果を高めることも可能です。 「締め切り」は集中力を高め、作業を効率的にすることは確かですが、注意すべき点が一つあります。心理学でいう「トンネリング」です。 これは何かに集中した時に、まるでトンネルの中にいるかのように対象以外のことが見えなくなる状態です。人間の能力には限界があるので、周りの物事すべてに集中することはできません。むしろ目の前にあるものに全力を注ぐために、それ以外のことをシャットアウトする力が集中力であると言うこともできるのです。 ですので、「締め切り効果」とともに「トンネリング」も覚えておくことが重要です。締め切り設定で集中した時、同時に視野が狭くなる可能性があることを自分自身で認識しておけば、目前の課題以外がおざなりにならないよう配慮することが可能になります。 橋本 之克 マーケティング&ブランディングディレクター/著述家