土中から多量の廃棄物…10階建て自衛隊宿舎建設ストップ 馬毛島基地整備進む西之表市、土地売買巡り防衛省と見解食い違う
鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地整備に絡み、同市の下西校区に新設される隊員宿舎について、土中から多量の廃棄物が掘り出されたため、工事を約2カ月中断していることが防衛省への取材で29日までに分かった。建設地周辺は、1960年代に「塵灰(じんかい)処理場」だった旨の記述が、過去の市広報紙などに残されている。11月1日から止まっている工事は再開の見通しが立っていない。 【写真】〈関連〉塵芥処理場の記録が残る「西之表市百年史」
建設地は元市有地で、面積7029平方メートル。市と同省は2022年11月末、2260万円(土地代のみ)で売却契約を結んだ。 南日本新聞は防衛省と西之表市に、それぞれメール、文書で中断の経緯や建設地の選定過程について質問した。同省は「掘削作業中に人の頭の大きさ程の石、空き瓶や古タイヤなどの地中障害物が確認された」とし、「宿舎用地として利用する候補地を市に求め、市側から適地として提示され購入した」と回答した。 一方、市は「複数の候補地から防衛省が下西校区を選定したと認識している。市が選定したという事実はない」と主張。土地資料を提供する際にはファイル名に「旧塵芥処理場」と明示し、同省職員が同行した用地調査でも「口頭で説明するなどした」としている。 工期延長や廃棄物対応による事業費の追加が懸念される中、両者の認識には隔たりがあり、現時点では責任の所在が不明確になっている。南日本新聞が情報開示請求した「不動産売買契約書」には、土地利用履歴に関する記述はなかった。
西之表市の隊員宿舎は当初の発注予定で地上5階建て3棟だったが、10階建て(高さ約33メートル)97戸分に変更された。建築計画概要書では、26年1月末の完成予定となっている。 ◇1960年代に年間5000トン超すごみ処理 西之表市の自衛隊員宿舎の建設地一帯が「谷間の地形を生かしたごみ処分場」だったことは、地元で広く知られていた。西之表市百年史によると、1960年から使われ、年間のごみ処理量は5000トン超。68年には処理が「限界に達した」とある。 防衛省側が土地購入にあたり、こうした史実を事前に把握していたかは論点の一つになりそうだ。南日本新聞は同省に(1)土地利用履歴を知った上での購入か(2)市側から説明があったのか-という点を質問したが、回答では言及がなかった。 不動産売買契約書は「危険負担」「契約不適合責任」など、不測の事態に備えた項目が設けられている。今後の対応について、防衛省は「市への確認を進めるともに、さまざまな検討を行っている」、西之表市も「事実確認中で分からない」とするにとどめた。
契約書には、紛争が生じた場合に「公正な第三者を選定し、あっせん、仲裁などにより円満な解決を図る」とも記されている。
南日本新聞 | 鹿児島