「おやつは外で食べよう!」保育士を増やしたら園児が喜ぶアイデア続々 70年前と同じ最低限の配置ではトイレにも行けない…国がやっと増員支援へ
現場の保育士からは「4~5歳児は保育士1人で30人も見なければならない。目が離せず、トイレにも行けない」といった嘆きも聞かれる。近年、保育現場での虐待や、通園バスへの置き去りが起きている背景には、人員が限られ余裕が失われていることが一因との指摘もある。 保育関係政策はここ数十年、共働き家庭の増加で保育需要が高まり、待機児童の解消が最優先されてきた。「子どもたちが心身ともに満たされ、豊かに生きていくための環境や経験」といった〝保育の質〟より、より多くの子どもを預かるための〝量〟が重視されてきた側面があった。 そこで政府は、今年3月に決定した少子化対策の試案で「配置基準を改善する」と明記した。ただ、すぐに基準を変えると現場への影響が大きいため、当面は基準を変えるのではなく保育士を増やせる施設へ国が支給する運営費を加算することにした。 新たな加算の対象は1歳児と4~5歳児だ。1歳児の場合、保育士1人が見る子どもの数を基準の6人から5人に減らした保育所が対象となる。4~5歳児は30人から25人に減らした場合が対象。手厚い配置となって人件費がかさむため、国が支給する運営費「公定価格」を増額する。3歳児には、すでにこうした加算がある。
▽保育士奪い合いの懸念も 政府の新たな加算で、保育の質や保育士の労働環境について改善が期待される一方で、保育士の人手不足に拍車がかかり、奪い合いが起きる懸念がある。保育士は他業種と比べ低賃金で、資格があっても働いていない「潜在保育士」も多い。小倉将信こども政策担当相は「保育士の処遇改善に取り組み、潜在保育士の復職も支援する」としているが、効果はまだ見えない。 全国的な広がりにも課題が残る。自身も保育所を運営する保育研究所の村山祐一所長によると、東京都内は保育士の手取りを増やす補助金が充実しているなど、自治体の支援に地域差があるという。村山さんは「保育士を増やした保育所に加算する国の対応は一歩前進だが、地域や施設によっては増やしたくても増やせないケースも出てくる」と指摘。手厚い保育士の配置を全国へ広げるには「一律の措置が必要だ。さらに踏み込んだ配置基準の改善と、公定価格の充実をセットでやるべきだ」と話している。