「おやつは外で食べよう!」保育士を増やしたら園児が喜ぶアイデア続々 70年前と同じ最低限の配置ではトイレにも行けない…国がやっと増員支援へ
野上さんは翌年度から保育士を増やす努力をした。区や都の補助金制度を徹底的に調べ、保育士の加配や地域貢献でもらえる補助金を漏れのないように申請。情報通信技術(ICT)を導入して欠席連絡をアプリでできるようにするなど、事務コストもカットして工夫を重ね、現在は6園全園で基準の2倍の保育士を確保している。働きやすさが評判となって、「ぜひ就職したい」という保育士の採用希望者が絶えず、求人費用も減った。 ▽育児中でも離職せずにキャリアアップ 保育現場にも好影響をもたらしている。余裕ができたことで、保育士からは「今日は天気が良いから3時のおやつを外で食べよう」「こういうイベントを取り入れたらどうか」といった子どもが喜ぶアイデアが活発に出るようになった。日中に保育士だけで会議ができるため連携が密になる、スキルアップの研修が受けやすい、といった効果もあり「保育の質の向上につながっている」と野上さんは感じている。夫で事務長の巌さんも「情熱を持って働いてくれる人が増えた」と話す。
さらに、人員に余裕があることもあり、この園では、育児中の保育士も離職することなくキャリアアップに励んでいる。小学生と保育園児の子どもがいる海東麻裕子さん(42)は、Picoナーサリ和田堀公園で担任リーダーを務める。一般的に育児中の保育士はパートで補佐的に働くケースも多いが、海東さんは「保育士のキャリアを考える上で、朝夕の送迎の時間帯に保護者対応をすることは重要」との思いから、正職員のままで働く。 園では、午前8時から午後6時までという、通常より限定した時間帯でシフトを組める「限定シフト制」を育児中の保育士に導入。海東さんも限定シフトを使い、自身の子どもと晩ご飯を一緒に食べられるぎりぎりの時間まで働く。「無理のない範囲で目いっぱい働ける環境で、やりたい仕事ができている」と生き生きと話す。 ▽最優先だった待機児童解消、70年以上見直されていない基準も 1人の保育士が何人の子どもを担当できるか年齢ごとに定めた基準は、「配置基準」と呼ばれる。認可保育所では0歳児は3人、1~2歳児は6人、3歳児は20人、4~5歳児は30人。ただ、日本の配置基準は戦後間もない1948年に決められて以降、見直しの機会は少なく、特に4~5歳児は70年以上1度も見直されていない。